瀬谷ルミ子著『職業は武装解除』(朝日文庫)を読む
5月16日(水)
知人の転職先がNPO法人「日本紛争予防センター」ということでその理事長の本を読んでみることにした。肩書きから年配の女性かと思ったら1977年生まれというのは意外だった。
読み進めるうちどこかで同じような内容を読んだような気がして本棚を探してみたら、岩波ジュニア新書の『国際協力の現場から―開発にたずさわる若き専門家たち』(2007)の執筆者の一人だった。国際協力の分野では有名な人らしく、著者略歴にも2011年にNewsweek日本版「世界が尊敬する日本人25人」、2015年にイギリス政府による「International Leaders Programme」に選出されたとある。
読み終えた印象は、優れたプレゼンテーションを見た後のような感じだった。武装解除とはどんな職業なのか、なぜこの職業を志したのか、そのために何をしてきたのか、どんな紛争地域で活動してきたのか、現場でのおもしろエピソード、そこで感じた問題点や手法の限界と新しい方法の試み、現在の活動、そして50年後の未来を見据えて日本は何をすべきかまで、よくまとめられている。
著者は現在、国際機関ではなく日本のNPOを活動の拠点としている。日本を選んだ理由として、日本の歩んできた戦後復興の歴史と比較的中立な立場をあげている。日本の戦後復興は今も世界の紛争地で復興の希望となっており、また中立な立場によって他の大国にはできない国際貢献ができるのだと言う。
この本は武装解除と紛争の再発防止、平和構築の活動の紹介を通して、これからの日本の国際貢献の方向性を問うものともなっている。あと、文庫版のあとがきの最後の一文に「夫と娘へ」と書かれてあって、本文にはそういうエピソードがまったくなかったため「いつ結婚したんだ?」と驚いたことも付け足しておく。解説は石井光太(作家)。
なお、著者が理事長をしているNPOのウェブサイトは下のとおり。
(5月3日読了)
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