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2017.02.09

ブログ再開―読んだ本5冊―

2017年2月9日(木)

昨年の9月半ばにパソコンが壊れて修理に出してからブログを書く習慣が途切れてしまい、今まで更新してこなかった。その間にも何冊か本を読んできたので、その感想を記しておきたい。短い感想をTwitterに残しておいたので、今回はそのツイートをベースとする。本を読んだ感想は読んで数日以内には残さないと、印象が薄れて中々文章として書けるまでにはまとまらないものだ。少なくともわたしはそうである。

1. 春日太一著『鬼才 五社英雄の生涯』(文春新書)

綿密な取材と著者の熱量とが噛み合って、抑制の効いたいい評伝となった。もし五社英雄が自伝を書いていたらどんな自伝になったのだろう。そう思わせてくれる評伝でもあった。(2016年9月12日読了)

2. 小林敏明著『廣松渉―近代の超克』(講談社学術文庫)

難解さで名高い廣松哲学のエッセンスを解説するとともに、日本思想史の文脈で論じたもの。戦前の近代の超克論、戦後の近代主義、ナショナリズムとインターナショナリズム、そして廣松の近代の超克。各々の関係が明確に示されてスッキリした。(2016年10月8日読了)

3. 筒井康隆著『モナドの領域』(新潮社)

哲学の根本問題である存在と時間の問題に、80歳になったSF作家がSFの形で解答したのがこの作品である。同時にいわゆる「神」が主人公の小説を、その小説世界の神である作家の視点から描くという、不思議な視点の小説となっている。(2016年11月4日読了)

4. こうの史代著『この世界の片隅に 上中下』(双葉社)

アニメの画は水彩画のような味わいだったが、原作の漫画はクレヨン画のような味わいで『夕凪の街 桜の国』とも違う。この漫画は歴史の書であると同時にすぐれた民俗学の書でもあると思う。戦時の人々の暮らしが丹念に描かれることで、人間の生の諸相が断層のように浮かび上がってくる。生きるとは何と残酷なことなのだろう。だが何と豊かなものなのだろう。(2016年11月29日読了)

5. 梶尾真治著『美亜へ贈る真珠』(ハヤカワ文庫)

デビュー作の表題作を含め全8篇の短編集。主に時間SFと恋愛を絡めた物語なのだが、これまで長編の梶尾作品ばかり読んで来たせいか、短編はそのエッセンスが濃縮された味わいがあった。(2017年1月10日読了)

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