梶尾真治著『クロノス・ジョウンターの伝説』(徳間文庫)を読む
5月10日(火)
熊本在住のSF作家・梶尾真治の代表作と言えるシリーズで、演劇集団・キャラメルボックスによって何度も舞台化されている作品である。以前から気になってはいたのだが、昨年2月、徳間文庫として作品が一冊にまとめられたのを機に読んでみようと思い立った。だが、それから実際に読み始めるのに1年、こうして感想を書き始めるのにさらに3ヶ月が過ぎてしまった。
その間に著者の一家は熊本の震災に巻き込まれ、一時、避難生活も余儀なくされた。ちょうど新作『杏奈は春待岬に』を出版したばかりだった。
この本では、クロノス・ジョウンターと名付けられた開発途上の物質過去射出機に乗り込んだ人たちの様々な軌跡が描かれる。この機械には重大な欠陥がある。一度過去へと射出されたら二度と現在に戻れず、しばらくすると過去の時点から反動で未来へと飛ばされてしまうのだ。それだけに乗り込もうと決意した人たちの想いはそれぞれに切実である。
わたしにはあの日に帰って人生をやり直したいという特定の日はないけれど、たとえば、もう見られなくなったTVドラマを、その時代に戻って見てみたいというような願望はある。物語の主人公たちの想いはもっと切実だけど、それはわたしのようなホンワカした願望とも確かに共鳴している。
実は『杏奈は春待岬に』でも”クロノス”が関わっているらしい。クロノス・ジョウンターの物語はまだ完結していない。
(2月19日読了)
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