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つんく♂著『「だから、生きる。」』(新潮社)を読む

10月16日(金)

著者の経歴は華やかである。90年代前半にシャ乱Qというロックバンドのリードボーカルとして世に出て、ミリオンセラーを連発し、その後、90年代後半からは、作詞・作曲家、そして音楽プロデューサーとして、モーニング娘。を始めとする人気ガールズ・グループのプロデュースに携わってきた。2006年に結婚し、3人の子供も授かり、仕事も家庭も順調なように見えた。その彼に過酷な現実が襲いかかる。2014年2月の検査の結果、喉頭がんにかかっていることが判明したのである。放射線治療、抗がん剤治療、完全寛解の診断と再発、そしてついに声帯切除手術に至るがんとの闘病が続く。

この本では、がんとの闘病が記されるとともに、がんになってしまった己の人生を振り返るものともなっている。著者はこれだけ健康に気をつけてきたのに何が悪かったのだろうと思う。だが、振り返るうちに、自分のダメだった部分が次々と思い浮かんでくる。華やかさの裏での寝る間もない仕事のスタイル、タバコ、喉の酷使、ジンマシンや喉の不調を薬で抑え、大量のサプリメントを摂取する毎日。結婚してからは、妻の助けもあって少しずつ改善してきたつもりだった。だが、喉の不調を自覚していたのにかかりつけの医者の言うことだけを鵜呑みにして放置してきたのはそれまでの自分ではなかったのか。

著者は自分の声を愛していた。歌手だった。だから声帯を失ったショックも大きかった。しかしそれよりも愛する家族のために生きることを選択した。こんな自分でもできること、こんな自分だからできることを考えて、生きていくことにした。わたしは、著者がこれから生み出す楽曲やプロデュースするコンサートや舞台が楽しみである。

(10月9日読了)

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レヴィ=ストロース、川田順造訳『悲しき熱帯Ⅱ』(中公クラシックス)を読む

10月9日(金)

4月から読み始めて10月に入ってようやく読み終えた。Ⅰを読み出したのが去年の12月上旬からだから、一作品を読み終えるのに10ヶ月ちょっとかかったことになる。なぜこんなに時間がかかったのかと考えてみると、いくつかの理由が思い浮かんでくる。本の内容についてはⅠである程度まとめてあるので、ここではその理由を書いておきたい。

まずは一文に込められた情報の濃密さである。1つの文に実に様々な情報が濃密に詰め込まれているため、それを理解するためには自分でその文を一々解きほぐして読んでいく必要があった。

次に風景や道具、人物描写がほとんど文章だけで表現されているため、実際にそれを見た人でないと想像が難しいことである。できれば写真や図解や映像もあればもっと理解しやすかったように思うのだが、これは1950年代の作品だから時代の制約もあってしかたのないことなのだろう。

3つめはその翻訳調の文体である。日本語だけでは何を言っているのかさっぱりわからなくて、原文のフランス語では何と言っているのか、英語翻訳版ではどう表現しているのかと何度も参照したくなった。

こういう本は文化人類学について相当の知識があるか、あるいは文化人類学者が読むとおもしろいのかもしれない。わたしにとっては、あまりにもハードで歯が立たない印象だけが読後感として残った。

(10月4日読了)

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