大野更紗著『シャバはつらいよ』(ポプラ社)を読む
8月14日(木)
『困ってるひと』が出版されて3年経つが、本作はその直接の続編となっている。前作は、ミャンマー(ビルマ)とビルマ難民についての若き研究者だった著者が、思いもかけず難病にかかって入院し、治療を受けながら様々な福祉制度の壁とも闘うという話だった。その感想は本ブログの2011年8月27日(土)に記してある。
→ http://yomisuke.tea-nifty.com/yomisuke/2011/08/post-2e04.html
本作では筆者は退院し、都心で一人暮らしをしながら闘病を続けてゆく。一人暮らしでクリアしなければならないことは多く、相変わらず制度の壁は分厚いが、一つずつ辛抱強く乗り越えながら、難病の一人暮らしを続けてゆく。だが、そんな著者と福島の家族に、やがて東日本大震災が襲いかかる。
前作と同様に、どんなに打ちのめされても、著者には若さと知性があり、闘病の暮らしをユーモラスに描いてゆく。前作とちがうのはTwitterを始めたことだ。シャバの暮らしの中で自分のフォロワーと実際に会ったりもする。わたしも著者のフォロワーになって3年半だから、著者のツイートはずっと見てきた。だから当時のツイートの背後にあった著者の暮らしを知って初めてああそうだったのかと納得できるところもあった。ただ「ちょもらんま~」とだけツイートしていた著者の苦しさが少しだけわかった気がした。
そのうえ本作では、著者は東日本大震災を機に新しい道へと踏み出す。震災を機に難病であっても人の役に立ちたいという思いがわき起こり、難病の当事者の立場から社会保障システムの研究をするために、大学院に入り直すのである。難病女子、物書き、研究者の3本立ての生活が始まった。はたしてこれからどうなるのだろう。続きはまた次回をお楽しみにというところだろうか。
(8月6日読了)
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