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川名壮志著『謝るなら、いつでもおいで』(集英社)を読む

8月19日(火)

2004年6月、長崎県佐世保市で小学6年生の少女が殺害された。犯人は同級生の少女だった。殺害された少女の父親は毎日新聞の佐世保支局長だった。著者は入社4年目の駆け出しの新聞記者として、佐世保支局に勤務していた。

娘を殺された父親の部下として大きな衝撃を受け、葛藤を抱えながらも、著者は新聞記者として取材を続けていく。関係者への取材を重ねても児童の犯罪ゆえに犯行の動機は中々見えてこない。ブログに書かれた詩や日記、バスケット部からの退部、交換日記をめぐるトラブル、精神鑑定による発達障害という診断、何かがわかったようで、何も見えてこないまま、断片的な事実だけが積み重なっていく。

やがて少女に児童自立支援施設への送致という審判が下る。だが、著者にとって事件は終わりではなかった。その後も遺族となった元上司や加害少女の父親などへと取材を重ね、一冊の本にまとめるまでに10年の月日を必要とした。

この本には最後に被害者の兄への取材に基づく、兄の一人語りの章がある。わたしはこの章がなければ、本として一冊にまとまることはなかっただろうと感じた。タイトルの「謝るなら、いつでもおいで」はこの兄の言葉である。彼は事件後何を経験したのか、それをどう乗り越えてきたのか。著者は兄への取材で初めて少年の可塑性を実感する。それは加害少女の可塑性への希望へとつながる。

この本に足りないところがあるとすれば、それは加害少女の手記だろう。それは永遠に埋められることのない章として空白のまま置かれるのだろうか。それともやがて少女が語り出す日が来るのだろうか。

(8月13日読了)

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