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吉本隆明著『ほんとうの考え・うその考え ―賢治・ヴェイユ・ヨブをめぐって―』(春秋社)を読む

10月5日(土)

昨年3月に87歳で亡くなった思想家・吉本隆明の89年、93年、96年の3回の講演をまとめたもの。すべて森集会という聖書を研究する団体の主催で、兵庫県芦屋市の芦屋市民センターで行われたものである。

宮沢賢治、シモーヌ・ヴェイユ、ヨブは、いずれも熱心な信仰者である。賢治は法華経、ヴェイユはキリスト教、ヨブはユダヤ教と信仰の対象は異なる。だが、いずれも党派性からはみ出た思想を獲得した信仰者である。

吉本は彼らがどのようにして党派性を越えたかに着目し、賢治は文学と科学、ヴェイユは肉体と精神の苦痛、ヨブは度を越えた受難によって、と理解する。

吉本の生涯の関心は、人は思想や宗教や政治の党派性をいかに越えられるかにあったが、ここでもそのテーマが中心に据えられている。「ほんとうの考え・うその考え」は賢治の『銀河鉄道の夜』初期形に出てくる言葉で、このテーマのキーワードにもなっている。

誰もが党派性を越えた開かれた場所に行けるとは思えないが、いかに越えたのかが具体的な人物によって示されることは希望になる。吉本自身もそうした思想家であった。

(9月30日読了)

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