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映画『リンカーン』を観る

5月4日(土)

1日(水)の映画の日に、新宿ピカデリ―で映画『リンカーン』を観てきた。リンカーンの伝記風な物語でないことは事前に予告編を観ていたのでわかっていたけど、実際に見てみると、有名なゲティスバーグ演説よりも後の、南北戦争も終わりに近づいた1865年初めのわずか1ヶ月間の物語だった。

物語の中心にあったのは、憲法改正である。リンカーンは合衆国憲法に奴隷制廃止の修正条項を加えようとしていた。奴隷解放宣言はすでに行ったもののその宣言に法的な根拠はなかった。そこで憲法の改正をすることで奴隷制を永遠に合衆国から葬り去ろうとしていた。だが、そのためには与党・共和党内のさらに過激な改正を要求する急進派の説得と改正に反対している野党・民主党から20名の賛成者を出すことが必要だった。

また、この提案は奴隷制を保持している南部諸州が復帰してからでは成立は不可能であるため、戦争が終結する前に成立させる必要があった。

物語はそのための多数派工作と戦争終結の交渉とを織り交ぜて展開していく。わたしはアメリカの歴史にくわしくないので、正直なところ、登場人物についてよくわからない所があった。たぶんアメリカ人にとっては日本の大河ドラマの登場人物のように、お馴染みの人たちなのだろう。そのお馴染みの人たちが出てきましたよという演出で、そこにはあまり付いていけないところもあった。

ただ、そんな勉強不足なわたしにも、リンカーンの真摯な気持ちは伝わってきた。リンカーン自身もけっして偉人ではない。1人の悩み苦しむ人間である。だが、奴隷制を廃止したいという気持ちの強さだけは超人的だった。

なぜそうまでしてリンカーンは奴隷制を廃止したかったのだろうか。それは、南北戦争を戦った60万人を越えた死者たちのためなのであろう。有名なゲティスバーグ演説は次の言葉で終わっている。それがリンカーンの真に成し遂げたかったことなのである。

―われわれはここで強く決意し、亡くなられたこれらの人たちの死を無駄にしないように、この国が神の下で新たな自由を生み出せるように、そして、人民の、人民による、人民のための政治がこの地上から滅びることがないようにしようではありませんか。(1863年11月19日)―

今、わが国でも憲法を改正しようという動きがある。はたしてそれは日本が日本らしい国として永遠に続くために必要なことなのだろうか。どのような憲法なら日本という国の形にふさわしいのか。『リンカーン』を観ることで日本の憲法についていろいろと考える機会にもなった。

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