宮下恵茉著『ジジ きみと歩いた』(Gakken)を読む
8月28日(火)
この作品は著者のデビュー作である。そして1991年春に設立された「小川未明文学賞」の第15回大賞受賞作品でもある。
主人公は小5の男の子である。きれいに整備された河原の前で、1年前の整備される前の河原での野良犬との出会いを振り返る所から物語は始まる。その野良犬の名前がジジで、爺のような犬だからとそう名付けられた。野良犬の住処である河川で工事が始まり、ジジは男の子の家で飼われることになる。
物語は男の子と友達3人とジジとのエピソードを軸に進んでゆく。やがて友達2人は男の子と遊ばなくなり、来生くんというドラえもんの出木杉くんみたいな男の子との話になる。ところが来生くんは家族に大きな問題を抱えていた。
少年が1年の間に様々なできごとを経験してちょっぴり成長するという話は、かつて子供の頃に学習雑誌などでよく読んだような記憶がある。なのになぜか、この本を読みながら泣くのをこらえている自分がいた。
本当は泣きたかったのだけど、電車の中で読んでいる最中にクライマックスになったもので、大の大人が人前で泣くわけにはいかなかったのだ。
少年と犬との関わり。これは人間と犬との長い関わりの歴史の芯にある部分の再現でもある。たぶんそこがとてもうまく書けていたので、私の心の琴線に触れたのだろう。
(8月25日読了)
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