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常岡浩介著『ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記』(アスキー新書)を読む

3月2日(金)

著者はフリーランスのジャーナリストである。一昨年の4月から、アフガニスタンでタリバンを自称するグループに約半年間拘束されたことで、一躍有名になった。わたしが著者の名前を知ったのもその事件がきっかけで、拘束直後に著者のTwitterアカウントをフォローした。無事帰国後は精力的にツイートしており、そのオタク的なツイートが実におもしろい。

著者は長崎県の島原市出身で、早稲田大学を卒業後、1994年からNBC長崎放送局の報道部記者になっている。わたしも長崎県出身なのだが、その感覚では、早稲田を出てNBCに入社というのは地元のエリートコースである。

しかし著者はその地位を捨て、98年からフリーランスのジャーナリストになる。そして99年11月には、この本の舞台であるチェチェンに現れている。イスラムに改宗しチェチェンゲリラの戦闘作戦に命がけの従軍をするのは2000年から01年にかけてである。いったい著者に何があったのかにも興味を引かれるが、残念ながらそのことは語られていない。

この本では、ロシアとトルコの間、黒海とカスピ海に挟まれた小国チェチェンと大国ロシアとの戦争が描かれている。この戦争は、その凄惨さや期間の長さの割に驚くほど知られていない。その理由としては、その地域がヨーロッパからも中東からも離れた地域にあって関心を抱かれにくいということに加え、ロシアの諜報戦によるものであることも指摘されている。

そのため、この本では、チェチェン戦争のことだけでなく、その周辺で起こった劇場占拠事件や学校占拠事件などの大きな事件についても取材し、そこでのFSB(ロシア連邦保安局)という諜報機関の暗躍を追及している。巻末には元FSB中佐で2006年に暗殺されたリトビネンコへのインタビューも収録されている。その内容は恐るべきもので、プーチン前大統領の犯罪を追及するものともなっている。

表題の「語られない戦争」には、だから、二つの意味があると言えるだろう。今まで誰にも語られなかったという意味と、プーチンに権力のある間はまだ語ることができないという意味とである。著者の記述は、その二つの「語られない」ことの間で揺れ動いているようにも見える。

(2月28日読了)

ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記 (アスキー新書 71)

読み助の本棚

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