マリアン・デレオ著『チェルノブイリハート』(合同出版)を読む。
1月7日(土)
短編ドキュメンタリー『チェルノブイリハート』のガイド本(合同出版)を読みました。作品自体は2002年製作でチェルノブイリ原発事故から16年後の現状を追ったものですが、このガイド本は2011年9月に出版されたものです。(以後ネタばれあり)
ガイド本は写真と文章だけなのですが、それだけでも現地の様子が伝わってきます。主な取材地は事故現場から数kmから数十km地点の町や村、その地にある病院や乳児院などで、事故の影響がどういうものだったのか、はっきり浮かび上がるようになっています。
気になったのは2点です。まず、広島・長崎の研究では確認されなかった、遺伝子への影響を報告していることです。チェルノブイリハートというタイトルは、この点を強調しているのですね。新生児の先天的な遺伝子異常はどこの国や地域でも見られることですが、現地の病院の医師は健常児として生まれる率は10~15%と証言しています。また、タイトルにある先天的な心臓疾患も他の地域より高いという医師の証言がありました。
2点めは、ドキュメンタリーとは直接関係はありませんが、死者数についての注釈の箇所です。これまでの国際的な調査では、チェルノブイリの原発事故による死者数の推計はチェルノブイリフォーラムの4千人からグリーンピースの9万人までだったのですが、この本ではニューヨーク科学アカデミーの推計(2009)98万5千人というまさに桁違いの数字も紹介しています。
このドキュメンタリーをどう見るかについては、崎山比早子氏(元放射線医学総合研究所主任研究員・高木学校)が解説しています。氏の活動する高木学校でも福島原発事故の被ばくの影響について講演や市民講座を開いているようなので、そのサイトを張っておきます(1)。また、氏が解説で紹介している『チェルノブイリ大惨事―人と環境に与える影響』はまだ邦訳は出ていませんが、英文は以下のサイトからダウンロード可能なようです(2)。
(1)http://takasas.main.jp/index.html
(2)http://protectchildren311.blog.fc2.com/blog-entry-89.html
(1月6日(金)読了)
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