ひし美ゆり子 樋口尚文著『万華鏡の女 女優ひし美ゆり子』(筑摩書房)を読む
8月9日(火)
ウルトラセブンのアンヌ隊員として知られる女優・ひし美ゆり子の女優としての軌跡を描いた本。ひし美がアンヌ隊員であったのは1967年10月から68年9月までのわずか1年、ちょうどその時期は映画の凋落とTVの勃興が交差する時期であり、ひし美は最後の撮影所女優として、その激流に巻き込まれながらも軽やかに流されるままに泳いでゆく。
ひし美ゆり子は、アンヌ隊員の頃の芸名は菱見百合子であった。それ以前には本名の菱見地谷子で活動していた時期があり、アンヌ隊員以後に成人映画に出たことがきっかけで現在のひし美ゆり子になる。その芸名の変遷は、そのままひし美の活動の変遷を象徴している。
この本は、文章は映画評論家の樋口尚文が担当している。私と同世代の評論家の文章には、アンヌ隊員への目線に似たところがあって共感できた。また評論家だけあって日本映画への造詣が深く、ひし美の出演した映画の解説や映画監督や脚本家のエピソードも実に興味深かった。
またこの本の大部分は、ひし美へのインタビューで占められている。そこで語られるエピソードも実におもしろかった。この本を読めば、アンヌ隊員しか知らなかった人でも、他の出演作も見たくなるはずである。
ひし美ゆり子は未だ現役の女優であり、Twitterやブログを続けている現役のネットアイドルでもある。そのことの幸運に感謝しながら、ひし美さんの活動をこれからも1ファンとして追っていきたい。
(長崎原爆投下66年目の日にこれを記す)
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