映画『人生、ここにあり!』を観る
8月4日(木)
1日(月)の映画の日に、シネスイッチ銀座で『人生、ここにあり!』というイタリア映画を観てきた。副題は『Si Puo Fare[シ・プオ・ファーレ]!』(やればできるさ!)である。
映画の日とはいえ平日なのに客席は満杯、立ち見まで出る盛況ぶりであった。それほど話題の映画とも思えないのだが、外国映画好きな人には見たいタイプの映画なのかもしれない。深刻な課題をヒューマニスティックにそしてコミカルに描くイタリア映画の伝統に則った感じの作りであった。
時は1983年のイタリア。登場人物は精神病の患者たちとそれを取り巻く人物たちで、主人公は、ひょんなことから患者たちの社会的な自立を目指して奮闘することになった、協同組合の異端の闘士である。実話を基に作られており、この名の協同組合は実在する。Si Puo Fare!は、その組合のスローガンである。
スクリーンの中では精神病を抱えた異形の人たちが異常な行動を取り続けるのだが、それがどこかユーモラスで、観客席から何度も大きな笑いが起こっていた。これは絶望の物語ではない。患者たちは、さまざまな問題を起こしながらも、希望を持って生きている。
だが、一般女性との失恋で手ひどく傷ついた男が自殺することで、主人公はいったん挫折してしまう。しかしそれを救ったのは、彼との仕事の中で変わっていった患者たちだった。
精神病を抱えた人たちを精神病院に隔離すべきなのか、それとも解放して社会で働いてもらうのか、日本でもこれから問題になってくるだろう。いや現実に、わたしの住まいのアパートでは、下の階に、精神病院から退院したとの噂の男が住んでおり、異常な言動を繰り返しながらも、何とか一人で生活している。
精神病院からの患者の解放が、こういう人を社会に増やすことでしかないのなら、わたしはその主張にはあまり賛成できない。だが、この映画を観ていると、彼らがどんなに変わっていても人間であることに変わりないことは理解できる。だとしたら、彼らが社会的な生活を送ることを権利として認めるしかないことも確かである。
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