« 2011年3月 | トップページ | 2011年6月 »

梶尾真治著『ゆきずりエマノン』(徳間書店)を読む

5月31日(火)

熊本在住のSF作家である梶尾真治が1979年から書き継いでいるのが、エマノンをヒロインとしたSF短編である。エマノンは地球の全歴史の記憶を持っているが、外見は若くて背の高いスレンダーな美人である。彼女はその特殊能力の故に、様々な不可思議な事件に関わってゆく。

この本には、そうしたエマノン・シリーズのうち2006年から2010年に書かれた短編4作が収められている。「おもいでレガシー」、「ぬばたまガーディアン」、「いにしえウィアム」、「あさやけエクソダス」の4作である。

読んでみて、同じ時期に書かれた長編とアイディアが似ている作品もあって、その時期の著者の経験がエマノンに凝集し、それが核となって長編が書かれるのではと推測した。著者にとってエマノンは着想の源なのかもしれない。

ではエマノンとは何者なのだろう。EMANONを逆に読むとNO NAMEとなるように、エマノンは名付けられない者である。エマノンはある時は地球の意志のようでもあり、ある時は遺伝子の意志のようでもある。エマノンの役割は作品ごとに変わってゆく。その自在さゆえにそこから様々な物語が生まれる。エマノンとはそういう存在なのである。

ゆきずりエマノン

| | コメント (0) | トラックバック (0)

玄田有史著『希望のつくり方』(岩波新書1270)を読む

5月8日(日)

希望の社会学、希望学という新しい学問の成果と今後の展望について書かれた本。著者は以前『仕事の中のあいまいな不安―揺れる若年の現在』という本で、若いフリーターや派遣労働者の実態をみごとに描き出した。この本でも主な読者として想定しているのは若者で、希望とは何か、今なぜ希望が失われたように見えるのか、どうすれば希望は取り戻せるのかについて、著者らしい真摯な語り口で述べている。

希望を持つ、持たないということは、個人的にはどうでもいいことなのだが、人々が希望を持って生きている社会であって欲しいとは思う。そのために政治にできることもあるだろうし、地域で取り組むべきこともあるだろう。希望を軸にして考えると、社会をどう変えていけばいいのか、人々は何をすればいいのかが見えてくる。

本書では岩手県の釜石市での訪問調査の結果も紹介されている。東日本大震災で大きな被害を受けた地域である。その市民の語る希望が、今こそ、東北の復興に必要とされているのではないかと、ふと、思った。そういう意味では、本書はタイムリーな本でもあるとも言えるだろう。

希望のつくり方 (岩波新書)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2011年3月 | トップページ | 2011年6月 »