玄田有史著『希望のつくり方』(岩波新書1270)を読む
5月8日(日)
希望の社会学、希望学という新しい学問の成果と今後の展望について書かれた本。著者は以前『仕事の中のあいまいな不安―揺れる若年の現在』という本で、若いフリーターや派遣労働者の実態をみごとに描き出した。この本でも主な読者として想定しているのは若者で、希望とは何か、今なぜ希望が失われたように見えるのか、どうすれば希望は取り戻せるのかについて、著者らしい真摯な語り口で述べている。
希望を持つ、持たないということは、個人的にはどうでもいいことなのだが、人々が希望を持って生きている社会であって欲しいとは思う。そのために政治にできることもあるだろうし、地域で取り組むべきこともあるだろう。希望を軸にして考えると、社会をどう変えていけばいいのか、人々は何をすればいいのかが見えてくる。
本書では岩手県の釜石市での訪問調査の結果も紹介されている。東日本大震災で大きな被害を受けた地域である。その市民の語る希望が、今こそ、東北の復興に必要とされているのではないかと、ふと、思った。そういう意味では、本書はタイムリーな本でもあるとも言えるだろう。
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