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2010.12.26

齋藤智裕著『KAGEROU』(ポプラ社)を読む

12月26日(日)

俳優の水嶋ヒロが俳優を辞めて書いた小説。水嶋はこの初めての小説で、賞金2千万円のポプラ社小説大賞に本名で応募し、みごとに大賞を受賞したことで話題になった。しかも彼はその賞金を辞退したのである。

そのように話題先行の本であったため、読む前からいろいろな批評が目に入った。そのほとんどは作品の出来をけなすものであり、他にも週刊誌で賞が出来レースであったという記事が載ったりしていた。でも、だからこそ自分で読む必要があった。

読んだ感想は、まず、おもしろかったということである。設定、ストーリー、仕掛けのどれもがうまくできていて、命という重いテーマを扱いながら、どこかユーモラスな物語であった。

文章自体はまだ拙く、作品として粗削りな感はあったがとにかく読ませる。新人でここまで楽しく読める作品は珍しいから、それだけでも賞を取るだけの価値はあると言えるだろう。

また、著者の命についてのメッセージがよく伝わる物語であった。命を大切にというメッセージは直接に言うと陳腐であるが、このように物語にすると、やっぱり大切だよなと素直に思える。主人公の「『死にたい』って、裏を返せば『生きたい』ってことなんだよね」(p.151)という言葉は、この作品の中心のメッセージだろう。生きたいと死にたい、一見正反対の感情だが、どちらも人間がよりよく生きられるように、人間に与えられた感情なのである。そしてその大切な命も、愛する人のために捨てるなら惜しくないと思えるのも人間なのである。つながりとしての命についても考えさせられる機会となった。

(12月24日読了)

KAGEROU

2010.12.09

メアリー・ノートン著・林容吉訳『床下の小人たち』(岩波少年文庫062)を読む

12月9日(木)

今年の8月1日にアニメ映画『借りぐらしのアリエッティ』を観たが、この本はその原作である。1952年に発表されカーネギー賞を受賞している。イギリス児童文学のもはや古典と言えるだろう。

物語は女の子がおばさんから聞いた話として始まる。ところがその女の子は直接聞いていないと言う。おばさんから話を聞いたのはケイトという名前の女の子だと言い張るのだ。

そしておばさんの話が始まるのだが、そのおばさんは子供の頃に弟から聞いた話としてその話を始める。だから本当かどうかわからないと言う。しかし第2章からはアリエッティが登場し、アリエッティの視点で語りが始まる。どうやらアリエッティの日記がどこかに残っているようなのだが、それは謎のままに物語は進んでゆく。

時代は19世紀の末頃、小人の夫婦と娘がイギリスの屋敷の床下に住んでいる。彼らは人間から物を借りて生きている種族である。ある日、小人たちは男の子に見つかってしまう。男の子は小人たちに好意的だったのだが、そのうち、住み込みで家事をしているおばさんに存在を感づかれてしまい、移住を余儀なくされる。この話の流れはアニメとよく似ている。

アニメとの違いは、小人たちの暮らしがみすぼらしくホコリまみれな感じがして、性格も人間臭いところである。アニメの映像は原作のイメージよりきれいに描きすぎのような気がした。それに原作の方では、この話が本当の話なのか弟の作り話だったのかが最後まであいまいであった。

イギリスの19世紀の風俗がわからないと細かい部分の描写の想像が難しく、また翻訳も古くさくて読みにくかった。その辺りを考慮した新しい翻訳が待たれるところである。ただ、その読みにくさにも関わらず、この本が古典として残るだけの名作であることはわかった。

床下の小人たち―小人の冒険シリーズ〈1〉 (岩波少年文庫)

2010.12.04

映画『Space Battleship ヤマト』を観る

12月4日(土)

12月1日(水)の映画の日に、新宿ピカデリ―で『Space Battleship ヤマト』を観てきた。日本の大作映画には珍しく水曜日が初日で、おかげで1000円で観ることができた。初日にも関わらず、平日のせいか、座席はけっこう空いていた。

わたしは『宇宙戦艦ヤマト』のTV放映を子供の頃に観ていて、それなりに思い入れもあるため、アニメの実写化にはそれほど期待していなかった。しかし予告編がおもしろかったので、とりあえず観ておこうという気になった。

観た感想はVFXがすごいの一言につきる。アニメでは表現できない、地球からのヤマトの発進、波動砲の発射の迫力が、実写では十分表現されていた。この場面を観るためだけでも、映画館に行くべきである。おそらくこの映像が日本映画のVFXの最高の到達点であり、世界に対抗できる部分だと思う。

あとストーリーの方も、アニメから36年経って古びた部分を削り、新しい要素を加えることで、初めて見る世代の鑑賞にも耐えられるようにしてある。その分、古くからのヤマトファンには不満が残るかもしれないが、わたし個人としては残してもらいたかった部分をうまく残してくれていてうれしかった。

製作者はこの作品で世界に挑む意気込みである。アニメのヤマトは海外でもファンが多い。はたしてこの作品がどのように評価されるのか、わたしも楽しみである。

Space Battleship ヤマト

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