メアリー・ノートン著・林容吉訳『床下の小人たち』(岩波少年文庫062)を読む
12月9日(木)
今年の8月1日にアニメ映画『借りぐらしのアリエッティ』を観たが、この本はその原作である。1952年に発表されカーネギー賞を受賞している。イギリス児童文学のもはや古典と言えるだろう。
物語は女の子がおばさんから聞いた話として始まる。ところがその女の子は直接聞いていないと言う。おばさんから話を聞いたのはケイトという名前の女の子だと言い張るのだ。
そしておばさんの話が始まるのだが、そのおばさんは子供の頃に弟から聞いた話としてその話を始める。だから本当かどうかわからないと言う。しかし第2章からはアリエッティが登場し、アリエッティの視点で語りが始まる。どうやらアリエッティの日記がどこかに残っているようなのだが、それは謎のままに物語は進んでゆく。
時代は19世紀の末頃、小人の夫婦と娘がイギリスの屋敷の床下に住んでいる。彼らは人間から物を借りて生きている種族である。ある日、小人たちは男の子に見つかってしまう。男の子は小人たちに好意的だったのだが、そのうち、住み込みで家事をしているおばさんに存在を感づかれてしまい、移住を余儀なくされる。この話の流れはアニメとよく似ている。
アニメとの違いは、小人たちの暮らしがみすぼらしくホコリまみれな感じがして、性格も人間臭いところである。アニメの映像は原作のイメージよりきれいに描きすぎのような気がした。それに原作の方では、この話が本当の話なのか弟の作り話だったのかが最後まであいまいであった。
イギリスの19世紀の風俗がわからないと細かい部分の描写の想像が難しく、また翻訳も古くさくて読みにくかった。その辺りを考慮した新しい翻訳が待たれるところである。ただ、その読みにくさにも関わらず、この本が古典として残るだけの名作であることはわかった。
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