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武良布枝著『ゲゲゲの女房』(実業の日本社)を読む

9月25日(土)

NHKの朝ドラ『ゲゲゲの女房』の原案となった本。漫画家・水木しげるの奥さんの武良布枝(むら・ぬのえ)さんの自伝であり、同時に水木さんの人生を傍らから見たものにもなっている。久しぶりのおもしろい朝ドラだったので、原案の本も読みたくなった。

はじめ原案と言うからドラマとはだいぶ内容がちがうのかなと思っていたが、本のエピソードのほとんどはうまくドラマに取り入れられていて、読んだ印象もドラマとほとんど変わらなかった。ただ、水木の兄がB級戦犯だったことや、恩給は境港の父母に全額渡していたこと、また水木が武蔵野美大に2年いてその後しばらく兵庫で兄夫婦と暮らしていたことなど、あえて触れられなかったエピソードもある。

また、ドラマはプロダクション設立20周年の時点で終わったが、本の方ではそれから後の勲章の受章や境港の水木ロード設立のいきさつについても書いてある。そのためか、ドラマの最後が「まだまだこれからだぞ」だったのに対して、本の副題は「人生は……終わりよければ、すべてよし!!」となっている。

しかし本の方も「でも、お父ちゃん、終わりはまだまだだよ」と言っているから、案外ドラマと本のメッセージは同じなのかもしれない。

貧乏暮しのどん底の中でもめげずに漫画を描きつづけた水木さん、そんな夫を支え続けた布枝さんに、ドラマからもこの本からも大きな勇気をもらった。ありがとう。だんだん。

(ドラマ最終回の日に)

ゲゲゲの女房

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映画『怪談新耳袋・怪奇』を観る

9月23日(木)

9月15日(水)にシアターN渋谷に映画『怪談新耳袋・怪奇』を観に行った。シアターN渋谷は毎月1日の映画の日の他に、毎週水曜日にも1000円で映画が観られる。中にはシアター1と2があり、1は座席数が75、2は102である。この映画はシアター1で上映されていた。入場料1000円の日とはいえ平日の昼間に行ったせいか、観客は30人程度だった。

『怪談新耳袋』は、『新耳袋』という現代の怪談集を元に、BS-TBSで放映されていたが、今回、その映画版ができたわけである。映画ではツキモノとノゾミという2話が作られた。主演はアイドルの真野恵里菜、監督は『東京島』の篠崎誠、脚本は『呪怨・白い老女』の三宅隆太である。

ツキモノは一種のパニックムービーで、女子大生を主人公に大学を舞台にして恐ろしい出来事が起こる。ノゾミは、幼いころに事故で妹を亡くして自分を責めて生きてきた女子高生に、幼な子の幽霊が現れるという話である。

ホラー映画である以上、観客を恐がらせなければ意味がない。2つの話はその点で、種類の異なる恐怖を十分に味わえた。ツキモノでは得体の知れないものに理不尽に追いかけられる恐怖、ノゾミでは自分の中の狂気と向き合う恐怖である。

わたし自身はホラー映画にはあまり興味がなくて、真野恵里菜が主演でなかったら観に行くことはなかっただろう。でもホラー映画としてもよくできていたので、たとえ真野が主演でなくても楽しめたと思う。

怪談新耳袋・怪奇

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梶尾真治著『壱里島奇譚』(祥伝社)を読む

9月12日(日)

熊本在住のSF作家・梶尾真治の最新長編。天草地方の壱里島(いちりじま)という架空の離島で起こった不思議な物語である。

SFというと昔話をひっくり返した未来話というイメージがあるが、この物語は現代のどこにでもありそうな地方の離島が舞台となっている。主人公は熊本出身で東京の商社に勤める30前の男で、会社ではあまりぱっとせず、退職願を出そうと考えていた。そこへ会社の常務から、壱里島で販売された「おもしろたわし」という名の不可思議な商品の調査とその島に住む母親の様子を見てくることを依頼される。

依頼を受け主人公は壱里島へ出張する。そこで島の人々の温かさとのどかな暮らしぶりに魅了されてしまう。だが、そのうち主人公の身に奇妙な事が次々と起こる。依頼した常務は実は存在していなかった。そして会社へはいつのまにか退職届が出されていた。

いったい何が起こっているのか。どうもこの島には魑魅魍魎のような不思議な力を持つ存在が宿っているらしい。

やがて島では大きな事件が起こる。町長がこの島を核廃棄物の最終処分場にするよう国に申請したのだ。その行方はどうなるのか。はたして主人公の運命は。

わたしは学生時代にサークル活動で離島に何度も行ったことがあり、仕事として原発の環境調査に関わったこともある。その経験からも、この物語の描写の確かさには驚かされた。まるで現実に壱里島があるかのようだった。また、物語の発想の元になったであろう「いちりとらん らんとらんとせ しんがらほけきょ とゆめのくに」というわらべ歌は、子供の頃に刷り込まれていたようで、数十年ぶりに強い懐かしさと共にメロディが蘇ってきた。

アイドルの真野恵里菜の出演する舞台『つばき、時跳び』の原作者ということで梶尾作品を読み始めたが、わたしにとって、今までにあまりない読書経験となった。自分の経験と物語とが深く共鳴する作品と出会えたのである。読書経験とは別に、現実の不思議な縁も経験することのできた作品でもあった。

壱里島奇譚

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