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ワクサカソウヘイ著『中学生はコーヒー牛乳でテンション上がる』(情報センター出版局)を読む

6月30日(水)

著者のワクサカソウヘイさんは1983年生まれのコント作家・脚本家である。ある日、著者はある中学校からコントの創作ワークショップの依頼を受け、それを通じてイマドキの中学生と友達になり、Tシャツビリビリーズなる集団を結成する。中学生が面白いことに気づいたからである。

この本では、中学生の何が面白いかをTシャツビリビリーズのメンバーを紹介し、彼らと遊ぶ中で描いてゆく。正直、最初は中学生たちのキャラの誇張表現に若干引いてしまった。いくらなんでもこんな中学生はいないだろうと最初は思った。だが、彼らのキャラになじむにつれて、特に誇張しているとは感じなくなっていったのは不思議だった。たぶんこれがコント表現というものなのだろう。

本の構成は、起承転結の4章でまとまっている。第3章は自分の中学時代の話である。この転の章があって、第4章の結の文章が生きてくる。文章の基本は起承転結と言われるが最近ではそのまんまの本はかえって珍しい。それだけに、起承転結ってのもけっこういいものだなと思えた。

その気になれば半日で読める本なのに、どういうわけか一カ月近くもかかってしまった。その分長く、わたしも中学生と遊んでいる気分になれたのはよかったのかもしれない。

中学生はコーヒー牛乳でテンション上がる

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廣野由美子著『批評理論入門 「フランケンシュタイン」解剖講義』(中公新書1790)を読む

6月2日(水)

今年の1月30日に当ブログにメアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』の感想を載せたが、この本はその作品を様々な文芸批評の理論によって解剖してみせたものである。著者としては最初『新・小説神髄』にするつもりであったのに編集者によって改題されたとのことだが、本の中味を見る限りは改題されたタイトルの方が中味をよく示している。文芸批評の理論についての本はいくつもあるが、一つの作品を使って説明した本は珍しい。著者の腕もいいのだろうが、実に手際よく作品を解剖してみせている。

この本は大きくは「Ⅰ小説技法篇」と「Ⅱ批評理論篇」に分かれている。小説技法篇では、この『フランケンシュタイン』という作品で使われている技法についてていねいに追って行くことで、小説とはどのような技法で成立しているかが示される。批評理論篇では、伝統的な批評理論から最新の批評理論まで網羅的に説明しながら、実際に作品にどう適用できるかを示している。

この本を一冊読むことで、小説をめぐる技法と批評についての広い視野を得ることができる。個人的には、完全に過去のものと思われたマルクス主義批評でも、使いようによっては未だに有効であることがわかったのはちょっとした驚きだった。旧来の文学的な技法や理論は新しい技法や理論に一旦は絶対的に否定される。しかし本当は文学的な営みに絶対はなく、技法や理論においても相対的なものなのである。

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

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