内藤朝雄・荻上チキ著『いじめの直し方』(朝日新聞出版)を読む
3月26日(金)
これは何よりも、今学校でいじめにあっている子供たちのための本である。95ページと薄く、イラストも豊富で、いじめにあっている子供に直接語りかけるように書かれている。だからと言って、その子供たちにがんばれとか勇気を出せなどと励ましているわけではなく、実際にいじめを直す(治すではなく)ための方法を示している。学校はともすればいじめの起きやすい環境に陥る。どのような環境でいじめが起きやすくなるのかその条件を上げ、それを一つずつつぶしていじめの起きにくい環境に変えるための方法が示される。
もちろんこれは学校の先生や親が読んでも役に立つ。学校からいじめを減らすための環境づくりは先生や親の仕事でもあるからだ。より大きく見ると、いじめの起きやすい社会を変えるために、すべての大人がこの本を読む必要があるとも言えるだろう。
ただ、そこまで大きく広げると少し違和感も出てくる。はたしていじめのまったく起きない社会は幸せな社会と言えるのだろうか。その問いは失業率0%の社会が幸せな社会と言えるのかという問いと似ている。最適失業率を唱える学者がいるように、社会にとって最適いじめ率みたいなものもあるような気がする。
でも、実際にいじめにあっている君にはそんなこと関係ないよね。まず自分に起こっているいじめをやめさせること。そのための具体的な方法が、この本にはちゃんと書かれている。それだけはまちがいない。
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