勝間和代・宮崎哲弥・飯田泰之(鼎談)『日本経済復活 一番かんたんな方法』(光文社新書443)を読む
3月1日(月)
宮崎氏と勝間氏は、今、TVなどのマスメディアで多くの発言を続けている評論家で、彼らの社会的な発言力はかなり大きい。また飯田氏は若手の経済学者で、最近になって、その経済政策のアイディアが様々なメディアを通じて知られるようになった。この本は、こうした3人が集まって、現在の不況にあえぐ日本経済を復活させるための処方を語りあったものである。宮崎氏が広い視野からのかじ取り、勝間氏がアジテーション、飯田氏が理論的な説明をするという役割が自然に振り分けられている。
3人に共通するのは、現在の日本経済はデフレ状況にあるということ、そこから脱却して経済をインフレ状態にして、経済を再び成長路線に乗せることが緊急の課題だと言うことである。構造改革も大事だが、改革をやるためにもまずは経済成長をというわけである。
そのための方策として何よりも効果があるのは金融政策であるという。日銀がインフレをターゲットにした金融政策に転換すれば、とりあえずデフレを脱却できる。日銀にそれができないのは、彼らが自分の利益ばかり考えているからだという。
そして日銀が動けないのは、メディア、ひいては国民にも責任があり、皆がそれぞれの立場で、政府や日銀に政策転換を訴えていくことが必要だという。
彼らの話を聞いていると確かにデフレは百害あって一利なしのようで、わたしたちの生活がここ20年どうもおかしかったのは、デフレが続いたことが一番の原因だったようである。これが金融政策の転換でインフレ状態に変えられるのならそれに越したことはない。ハイパーインフレーションの心配はあるが、最新の経済理論によると、そう簡単に起こるものでもないらしい。
ただ、一方、さらに長期的に見た時に、はたして人類社会は永遠に経済成長を続けられるのだろうかという疑問も残る。定常型社会の構想が一定の説得力を持つのもそういう素朴な見通しが誰にでもあるからだろう。そう思うと、とりあえずは経済成長を維持するとしても、さらに長期的な展望も頭の片隅に置いておく必要はあるのではないか。
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