高田明典著『難解な本を読む技術』(光文社新書406)を読む
1月22日(金)
著者は1961年生まれのフェリス女学院大学文学部の教授である。この本で初めて知った名前だが、著者略歴によるともっぱら現代思想の解説の分野で本を書いているようである。本書では、難解な現代思想の本をいかに読めば自分の血肉にできるのかという観点で、著者の読書の手の内を明かしてくれている。
著者はまず難解な本を開かれている本と閉じた本、その各々を登山型の本とハイキング型の本に分類し、本の読み方を同化読みと批判読みに分類する。そして本書では主に登山型の本についての同化読みの方法を示すと言っている。
その方法の基本は、本を2度読むということと読書ノートを取るということである。著者は、難解本は最低2度読まなければ読んだことにはならないと言う。最初は読書ノートを取りながら通読していく。そこで論理の流れやわからないところなどを、文字や図解にしながら書き込んでいく。2度目はその読書ノートを傍らに詳細に読んでいく。そこでさらに気づいたことがあれば、ノートの該当部分にさらに書き込んでいく。その過程で起こる様々なわからなさについても具体的に解決の道筋が示されている。
本書ではさらに高度な本の読み方をいくつか示した後で、付録として読書ノートの記入例や代表的な難解本の具体的な読み方ガイドを載せている。ガイドでは超難解な本の読み方が示されており、わたしとしては特にラカンの読み方に感銘を受けた。著者にはどんなに難解な本であっても必ず理解してみせるという強い意志が感じられる。著者は目を通すだけなら年間2千冊の「読書」をしている。目標は5千冊と言うから驚く。そのような読まない「読書」の方法も本書には示されている。
わたしもさっそく以前から読みたいと思っていたわたしなりの難解本をこの方法で読み始めた。立岩真也著『私的所有論』(勁草書房)という本である。今年はせめてこの本だけはきちんと読み込みたいものと思っている。
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