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2009.11.30

野口敏著『一瞬で心をつかむ話し方』(学研M文庫)を読む

11月30日(月)

話ベタで悩んでいる人に対してコミュニケーションの極意を示した本。会話とは気持ちのキャッチボールであること、互いの心が通じ合うことが大切であること、気持ちを伝えるためには言葉の部分はわずかで他にも4つの要素があることなど、まず会話にとって重要なことを説き、次いで具体的な事例によってその応用を示している。

確かにこのように話せれば、わたしも今よりは話し上手になれるだろうという気にはさせてくれる。でも、一番大切なのは、この本に書いてあることを試してでも人と会話したいと思えるような自分に、自分を変えることなのだろう。もちろん気が進まないままながらでも実際に試してみることで、そんな自分に変わる可能性もあるわけだけど。

(11月24日読了)

2009.11.24

野中広務・辛淑玉(対談)『差別と日本人』(角川oneテーマ21)を読む

11月24日(火)

この本は、元衆議院議員で自民党の実力者だった野中広務氏と在日朝鮮人の辛淑玉(シン・スゴ)氏が、日本における被差別部落や在日朝鮮人への差別について、自身の人生を振り返りながら語り合ったものである。ただ、対談内の解説はすべて辛氏が担当している。

野中氏は京都の被差別部落の出身で、自らも差別と闘いながら、地元の町議から町長、京都府の副知事を経て衆議院議員になった。ただ、同時に議員として、被差別部落の差別故の特権に対してもその排除に努めてきた。差別はいけないが差別にあぐらをかくことも許さない立場である。また、自民党の中では権謀術策に長けた人とも見られており、目的のためには相当汚い手を使ってきたようだ。ただその目的自体は立派なことが多かった。

一方の辛氏は在日朝鮮人として差別と闘い続けてきた人である。一時期はTVメディアにも露出し、積極的に在日の地位向上のための発言を続けてきた。

差別がテーマでしかも当事者たちが語り合うのだから、おもしろくないはずはない。しかも野中氏は自民党の実力者として政界の暗部も見てきている。数々のエピソードには圧倒されるばかりだった。あとがきで野中氏が書いているように、辛氏という巧みな聞き手を得たことで引き出された部分も大きい。

日本人がしてきた差別という視点から歴史を見ると暗い気分にもなるが、そのような暗部が実は今も日常にあるのはまちがいない。例えば2chなどの本音丸出しの匿名の巨大掲示板をのぞいてみると、当たり前のように差別用語が飛び交っている。だからこそこの本のようなテーマが不断に語られる必要がある。

(11月21日読了)

2009.11.15

鹿島茂著『吉本隆明1968』(平凡社新書)を読む

11月15日(日)

1968年とは全共闘運動と言われる学生運動がピークだった年で、その当時に著者は東大の学生で、吉本隆明を読んで生涯の影響を受けた。そんな著者にとって、現在の吉本の受容のされ方には大いに不満があり、そのため、全共闘世代に、吉本がいかに受容されたかを書こうと思うに至った。本書は、著者にとっての吉本の偉さの核心を説明するとともに、その偉さが後の世代にも伝わるようにとの願いが込められたものである。

わたしも大学時代の80年代前半に吉本の著作を集中して読んだから、吉本思想を少しは理解しているつもりでいたが、この本は新鮮に読むことができた。というのは、この本の中心にあるのは初期の『芸術的抵抗と挫折』や『高村光太郎』などであり、わたしはそれを読んでいなかったからである。それに、遅れてきた世代としては、今までどちらかと言えば『共同幻想論』のような主要な著作への関心が高かった。

だが、吉本の真の偉さはむしろ初期の著作に表れているのだ。わたしもこの本を読んで初めて吉本思想の醍醐味を味わうことができた。『共同幻想論』のような後の著作は、初期の問題意識の展開としてあり、その問題意識を理解しないで読んでも、生きた思想としては理解できなかったはずである。

今までに吉本論もけっこう読んできたが、その中でもこの本は最も優れた吉本論の一つと言えるだろう。現在40代後半の社会学者・小熊英二の吉本論(『民主と愛国』第14章)と比較するとおもしろいかもしれない。

2009.11.08

読んだ本3冊

11月8日(日)

1.鴻上尚史著『孤独と不安のレッスン』(大和書房)

この本を読んだのは10月23日でわたしの誕生日であった。その日に48歳になった。都会暮らしの独身のわたしにとって孤独と不安はつきものであり、そういう孤独感や不安感をなだめながら生きていくしかない。今さらの感はあったが、鴻上氏はすぐれた劇作家であり、日本社会のあり様に対する鋭い観察眼も持っている。気になる同世代の人のこの今さら感漂うタイトルにかえって引かれて読む気になった。

職場や教室で昼ご飯を寂しい思いで1人で食べている若い人たち、1人になるのがイヤで嫌いな人との嫌いな話題にも無理に笑顔を作って合わせているような人たち、みんなに嫌われていると悩んでいる人たち、そんな人たちにとって、この本はきっと助けになるだろう。

2.竹宮恵子著『吾妻鏡 上 マンガ日本の古典14』(中公文庫)

このマンガは上中下の3巻あるのだが、上巻だけ10月27日に読み終えた。10月24日から28日まで帰省していたから、その間に読み終えたことになる。

吾妻鏡は鎌倉幕府成立以前(1180年4月)から鎌倉時代中ごろ(1266年7月)までの80年余りの公式の記録書で、それを基に竹宮恵子がマンガ化した。ただ吾妻鏡には記載のない年が12年分あり、竹宮はそのうち重要なエピソードを別の文献で補っている。

マンガとはいえ中味は古典だけあってかなり読み応えがあった。いつもならマンガは読書のうちに入れないのだが、これはふつうの読書と同じくらい読み応えがあったのであえて紹介した。上巻は源頼朝の挙兵から木曽義仲の上洛まで。以前にNHK大河ドラマの『義経』を見ていたのが理解の助けになった。

まずは上中下の3巻を読み終えて、いずれは吾妻鏡全訳本やがては原典に挑みたいものである。歴史の荒波を越えて残った日本の古典である。読まないのはもったいない。

3.内田樹著『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)

これは今日読み終えた。

新書ではあるが中味は深い。著者は本書により小林秀雄賞を受賞している。この賞は新潮社系の財団からすぐれた評論・エッセイの書き手に贈られる賞であるから、最近の内容の浅い新書とは一線を画している。

この本を読んでわかるのは、ユダヤ人と呼ばれている人たちの集団としての知性の卓越性である。多くの人はユダヤ人問題を語る時に人種差別の一種として語る。反ユダヤ主義はあくまでも差別する側の問題であるというわけである。しかし著者はその語りに抗して、ユダヤ人問題をユダヤ人の側の問題として語ろうとしている。

これはユダヤ人特殊論であり、文脈が変われば反ユダヤ主義に転化しかねない綱渡りの論である。しかし著者はそうならないように、注意深く論理を展開していく。

人類はユダヤ人を生み出した。世界史はユダヤ人への迫害と虐殺に満ちている。だが実はユダヤ人のいない人類は成立しないのである。その辺りの著者の思想は、ユダヤ人思想家のレヴィナスに依拠しておりかなり難解である。ただ感覚的にわかるのは、これからもユダヤ人問題は人類の課題であり続け、その深淵との関わりこそが歴史を作っていくのだろうということである。

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