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2009.11.08

読んだ本3冊

11月8日(日)

1.鴻上尚史著『孤独と不安のレッスン』(大和書房)

この本を読んだのは10月23日でわたしの誕生日であった。その日に48歳になった。都会暮らしの独身のわたしにとって孤独と不安はつきものであり、そういう孤独感や不安感をなだめながら生きていくしかない。今さらの感はあったが、鴻上氏はすぐれた劇作家であり、日本社会のあり様に対する鋭い観察眼も持っている。気になる同世代の人のこの今さら感漂うタイトルにかえって引かれて読む気になった。

職場や教室で昼ご飯を寂しい思いで1人で食べている若い人たち、1人になるのがイヤで嫌いな人との嫌いな話題にも無理に笑顔を作って合わせているような人たち、みんなに嫌われていると悩んでいる人たち、そんな人たちにとって、この本はきっと助けになるだろう。

2.竹宮恵子著『吾妻鏡 上 マンガ日本の古典14』(中公文庫)

このマンガは上中下の3巻あるのだが、上巻だけ10月27日に読み終えた。10月24日から28日まで帰省していたから、その間に読み終えたことになる。

吾妻鏡は鎌倉幕府成立以前(1180年4月)から鎌倉時代中ごろ(1266年7月)までの80年余りの公式の記録書で、それを基に竹宮恵子がマンガ化した。ただ吾妻鏡には記載のない年が12年分あり、竹宮はそのうち重要なエピソードを別の文献で補っている。

マンガとはいえ中味は古典だけあってかなり読み応えがあった。いつもならマンガは読書のうちに入れないのだが、これはふつうの読書と同じくらい読み応えがあったのであえて紹介した。上巻は源頼朝の挙兵から木曽義仲の上洛まで。以前にNHK大河ドラマの『義経』を見ていたのが理解の助けになった。

まずは上中下の3巻を読み終えて、いずれは吾妻鏡全訳本やがては原典に挑みたいものである。歴史の荒波を越えて残った日本の古典である。読まないのはもったいない。

3.内田樹著『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)

これは今日読み終えた。

新書ではあるが中味は深い。著者は本書により小林秀雄賞を受賞している。この賞は新潮社系の財団からすぐれた評論・エッセイの書き手に贈られる賞であるから、最近の内容の浅い新書とは一線を画している。

この本を読んでわかるのは、ユダヤ人と呼ばれている人たちの集団としての知性の卓越性である。多くの人はユダヤ人問題を語る時に人種差別の一種として語る。反ユダヤ主義はあくまでも差別する側の問題であるというわけである。しかし著者はその語りに抗して、ユダヤ人問題をユダヤ人の側の問題として語ろうとしている。

これはユダヤ人特殊論であり、文脈が変われば反ユダヤ主義に転化しかねない綱渡りの論である。しかし著者はそうならないように、注意深く論理を展開していく。

人類はユダヤ人を生み出した。世界史はユダヤ人への迫害と虐殺に満ちている。だが実はユダヤ人のいない人類は成立しないのである。その辺りの著者の思想は、ユダヤ人思想家のレヴィナスに依拠しておりかなり難解である。ただ感覚的にわかるのは、これからもユダヤ人問題は人類の課題であり続け、その深淵との関わりこそが歴史を作っていくのだろうということである。

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