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鹿島茂著『吉本隆明1968』(平凡社新書)を読む

11月15日(日)

1968年とは全共闘運動と言われる学生運動がピークだった年で、その当時に著者は東大の学生で、吉本隆明を読んで生涯の影響を受けた。そんな著者にとって、現在の吉本の受容のされ方には大いに不満があり、そのため、全共闘世代に、吉本がいかに受容されたかを書こうと思うに至った。本書は、著者にとっての吉本の偉さの核心を説明するとともに、その偉さが後の世代にも伝わるようにとの願いが込められたものである。

わたしも大学時代の80年代前半に吉本の著作を集中して読んだから、吉本思想を少しは理解しているつもりでいたが、この本は新鮮に読むことができた。というのは、この本の中心にあるのは初期の『芸術的抵抗と挫折』や『高村光太郎』などであり、わたしはそれを読んでいなかったからである。それに、遅れてきた世代としては、今までどちらかと言えば『共同幻想論』のような主要な著作への関心が高かった。

だが、吉本の真の偉さはむしろ初期の著作に表れているのだ。わたしもこの本を読んで初めて吉本思想の醍醐味を味わうことができた。『共同幻想論』のような後の著作は、初期の問題意識の展開としてあり、その問題意識を理解しないで読んでも、生きた思想としては理解できなかったはずである。

今までに吉本論もけっこう読んできたが、その中でもこの本は最も優れた吉本論の一つと言えるだろう。現在40代後半の社会学者・小熊英二の吉本論(『民主と愛国』第14章)と比較するとおもしろいかもしれない。

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