映画『チョコラ』を観る
10月8日(木)
先週の水曜日、9月30日に映画『チョコラ!』を観に行った。この映画はドキュメンタリーで、アフリカの東にあるケニア共和国の首都・ナイロビの郊外にあるティカという小都市を舞台にしている。その街のストリート・チルドレンが、この映画の主人公たちである。チョコラとはスワヒリ語で「拾う」を意味する。彼らは主にゴミを拾って生きていることから「チョコラ」と呼ばれている。
この映画は不思議な音色と共に13歳の少年の水浴びのシーンから始まる。全裸ですべてを晒しながらもエロは感じない。ただ、少年でまだチンコに毛も生えていないのに、その黒光りする裸体はすでにたくましさを身につけつつある。映画監督は、この姿にこの街に生きるチョコラたちの生身の姿を象徴させたかったのかもしれない。
様々な少年たちが現れる。彼らの生活は汚くはあるが、そこにいる限りは安定しているようにも見える。その中にテルミと呼ばれる日本人の初老の女性の姿がある。「モヨ」という孤児院をやっているようで、路上生活する少年たちに声をかけては、親元に戻すよう努力している。親と少年たちとの話し合いは概ね不毛だ。親は自分を正当化するか子供をやっかい者扱いし、子は親に心を開かない。ただ彼らは弟や妹には優しい。めったに帰らないのに飼い犬が大喜びで飛びついてきたりもする。
エイズの母親も現れる。離婚してスラムに戻り、幼い娘と息子を育てている。どうやら売春で暮らしているようだが、その生きる姿は堂々として美しい。
彼らは撮られていることを意識している。その態度に、わたしは彼らを見ていることを意識する。そして彼らにも見られているように感じる。この撮り方には、一方的な傍観者であることは許されないという映画監督の想いが込められているのだろうか。
映像は汚い生活を描いているのになぜか美しい。それはこの映画監督がそのように描いているからである。それに少年はいくら汚いかっこうであっても、生身は美しいものである。年配の路上生活者を描いたらこういう映像にはならなかっただろう。
わたしの場合、最近『絶対貧困』という本を読んでいたので、映画の世界を理解しやすかったが、何の予備知識もなしに観るのは少ししんどいかもしれない。そういう意味では観客を限定する映画とも言える。今、この映画は全国で少しずつ上映会が開かれているから、機会があったら観てもらいたい。なお、岩波ブックレットからも『チョコラ!―アフリカの路上に生きる子どもたち―』が出ている。映画の裏話も載っていて、映画の理解に役立つ。
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