平野啓一郎著『本の読み方 スロー・リーディングの実践』(PHP新書)を読む
10月20日(火)
若手の芥川賞作家によるスロー・リーディングのすすめ。帯に「作家が読むと、本はこんなに面白くなる!」とあるように、作家としての著者による具体的な作品分析もある。
今は、いかに速く大量に読むかに価値の置かれる時代であり、速読法なる読書術がもてはやされている。しかし、著者は速読が必要な場合があることを認めつつ、そうやって得られる情報にはあまり意味がないと言う。本当に大切なものは、著者の言うスロー・リーディングによって得られるのだそうだ。速読が明日のための読書だとしたら、スロー・リーディングは5年後、10年後のための読書であるとも言う。
ただ、スロー・リーディングと言ってもゆっくり読めばいいというわけではない。著者はそのコツを基礎編、テクニック編、実践編に分けて説明している。基礎編では著者の基本的な考えが、テクニック編では具体的な方法が、実践編では実際の作品を著者がスロー・リーディングのテクニックによっていかに読んだかが具体的に書かれている。
スロー・リーディングを勧める本なのに、普通の新書よりあっさり読めたのは皮肉なことだが、確かにこれくらい分析的に作品を読めたらなとは思う。ただ、それは自分にとって魅力的な作品に限られる。ふつうの読書にそこまで求めるのは負荷が大きすぎる。わたしにふだんできることは、せいぜいブログにこうして感想を書くことくらいか、もしくは作品の解読本を読むことくらいだろうか。わたしのような読者のためにか、著者も続編として『小説の読み方 感想が語れる着眼点』(PHP新書)を著している。
(10月16日読了)
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