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八代嘉美著『iPS細胞 世紀の発見が医療を変える』(平凡社新書)を読む

6月22日(月)

最近ニュースで再生医療とか万能細胞という言葉をよく聞くようになったが、その具体的な中身についてはよくわからなかった。この本では、わかりやすくその辺りの事情が説明されている。関心のある方はまずこの本を読むべきだろう。

現在の医療では臓器が機能不全に陥った時の最終手段は他人からの臓器移植しかないが、再生医療という自分の細胞から臓器を作り出して移植する治療法が、未来の医療として期待されている。そこで注目されているのが俗に言う万能細胞、正式には「人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem cell)」、略して「iPS細胞」である。

iPS細胞は遺伝子の操作によって人工的に作られた万能細胞だが、以前の万能細胞としてはES細胞が注目されていた。ES細胞とは「胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell)」の略で、胚すなわち受精卵に由来する幹細胞である。幹細胞とは様々に他の細胞に変化する基になる細胞で自らも増殖する性質を持つ。このES細胞の発見がすべての始まりだった。

だが、ES細胞は受精卵由来ということで、受精卵を操作するという生命倫理上の問題を孕んでいた。iPS細胞は体細胞由来のためその問題をクリアしている。ただ、遺伝子を操作して作った人工細胞であるから、遺伝子を操作することの是非という生命倫理上の問題は未だに残る。

しかし著者は、現役の若手研究者としてあくまでも研究を推進する立場を取る。iPS細胞の研究は生命の謎を解明するための重要な研究なのである。と同時に、再生医療の技術が企業に独占され、高額な医療になることへの危惧も表明している。

iPS細胞と再生医療の研究は、今後の展開次第では社会の在り方を大きく変える可能性もある。著者はその未来の可能性に大きな希望を抱いている。

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