前田高行著『アラブの大富豪』(新潮新書)を読む
11月12日(水)
つい最近までのガソリン代の高騰は、原油の先物市場での異常な高騰が原因だった。そういった先物市場を始めとする金融市場を駆け巡っているのが、中東のオイルマネーである。オイルマネーは今や全世界の経済に大きな影響を及ぼす力を持っている。
本書はそういうオイルマネーを操る、ウォンテッドならぬアラブの大富豪たちを描いたものである(もっともビンラディンはウォンテッドされているが)。著者は元々物書きではなく、中東の石油畑を歩んできたビジネスマンであったが、定年後に中東情報に関するブログを立ち上げた。それが徐々に評判となり、編集者の目に留まって本書の出版となった。自らの体験を元に語っているだけあって説得力がある。それに異国の桁外れに豊かな世界の話は、景気がよくて読んでいて気持ちいい。あまりに景気がよすぎて、嫉妬する気も起きないほどだ。
アラビア半島にはサウジアラビアやカタル、アラブ首長国連邦などの王国が連なっている。各国とも石油と天然ガスの産出国であり、そのおかげで国民は税金を支払う必要がなく、皆が金持ちである。中でも王族や豪商の財産は桁外れで、彼らは尽きることのない財産を使って巨大事業や投資を続け、さらに豊かになっていく。
日本ではバブルは数年しかなかったが、アラビアの王国ではもう何十年もバブルが続いている。少なくとも石油の埋蔵量はあと約70年分あるから、それまでバブルが続く可能性が高い。ただ、栄枯盛衰という言葉もある。10月にアメリカの金融バブルがはじけて、はたして彼らはどれほど打撃を受けたのだろうか。
著者は今4つのウェブサイトを主宰または共同で運営している。今後の中東情勢に興味のある人は、一度覗いてみるのもいいだろう。ここでは1つだけ下にリンクを張っておく。
(11月10日読了)
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