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2008.11.30

宮崎哲弥著『新書365冊』(朝日新書)を読む

11月30日(日)

「はじめに」で説明があるように、この本は、雑誌『諸君』(文藝春秋)において2002年1月号から2006年3月号まで連載された新書の書評のうち365冊分をジャンル別にまとめたものである。全部で17の章があり、最初の15章で、各ジャンルのBest & Betterな新書と要注目のMoreな新書が著者一流の書評によって紹介されている。第16章は問題な新書ということでWorstな新書が紹介され、すべてが一刀両断に切り捨てられている。そして最終章では、インタビュー形式で連載終了以後の注目の新書が取り上げられ、さらに新書の現在についての著者の考えが語られている。

著者の宮崎哲弥は、TVやラジオのコメンテーターとして有名な評論家で、雑誌の連載をいくつも抱えた多忙な日々を送っている。その著者がこの書評の連載中には月に60冊から100冊の新書を読んでいたというから驚く。本の帯にもあるように「ミヤテツさん、読み過ぎです!」とわたしも言いたくなる。

しかしもっと驚くのはその書評の質である。どのジャンルの書評に関しても深い見識が感じられるのだ。そして選ぶ新書にもかなり柔軟性がある。よい本であれば高校生向けの岩波ジュニア新書であってもBestの新書に選ぶことをためらわない。

雑誌連載が終わってすでに2年が過ぎ、選ばれた新書がやや古びているのは確かである。それでも今まで知らなかった良書を知ることができたのは収穫だった。この本は少しずつ読み進め、2ヶ月くらいかけてようやく読み終えた。その間に、著者の紹介した本をすでに何冊か買い、これから読むつもりでいる。

著者も言うように、最近の新書はかつての学問の入門書としての役割を離れ、はてしなく内容が薄くなっているように思える。それでもその新書の大海の中に良質の新書はいくらでも見つかる。ただし、それにはよき導き手が必要である。

導き手としてはやはり新聞や雑誌の書評がもっとも手近である。著者の評論家としての活動は幅広いが、すぐれた書評の書き手としても今後も活動を続けてもらいたいものである。

(11月29日読了)

読み助の本棚

2008.11.19

大内伸哉著『どこまでやったらクビになるか』(新潮新書)を読む

11月19日(水)

副題に「サラリーマンのための労働法入門」とあるように、会社員は法律によってどこまで守られているのかという観点から、労働法について講義の形式で解説している。講義は全部で18講ありその各々で補講もある。一冊読めば労働法の基本的な考え方を学ぶことができる。ちなみに労働法と一口に言っているが、別にそういう名の法律があるわけではない。あくまでも労働に関連した様々な法律を総称したものである。

1回の講義には一つのテーマがあり、ブログで会社の悪口を書いたらどうなるかとか、社内不倫がバレたらどうなるかとか、給料分働かない社員はクビにできるのかなど、かなり具体的である。講義では各々のテーマに対応する労働法の考え方について裁判の判例などを挙げて解説している。

労働法は労働者を守るための法律である。会社員も労働者である以上、労働法によって守られている。ただ、何をしてもいいというわけではない。やはり真面目に働いている労働者を守るための法律なのである。

それにしてもこの著者、セクハラの講で例えとして出す名前が最近TVで活躍している女優や芸人の名前でずいぶん気が若い。で生年を見たら1963年。わたしより2歳若い。わたしより若い人が神戸大学大学院の教授でこういう入門書を書く年代になったのだなと思ったら、ほんの少しだけ切ない気分になった。

(11月15日読了)

2008.11.12

前田高行著『アラブの大富豪』(新潮新書)を読む

11月12日(水)

つい最近までのガソリン代の高騰は、原油の先物市場での異常な高騰が原因だった。そういった先物市場を始めとする金融市場を駆け巡っているのが、中東のオイルマネーである。オイルマネーは今や全世界の経済に大きな影響を及ぼす力を持っている。

本書はそういうオイルマネーを操る、ウォンテッドならぬアラブの大富豪たちを描いたものである(もっともビンラディンはウォンテッドされているが)。著者は元々物書きではなく、中東の石油畑を歩んできたビジネスマンであったが、定年後に中東情報に関するブログを立ち上げた。それが徐々に評判となり、編集者の目に留まって本書の出版となった。自らの体験を元に語っているだけあって説得力がある。それに異国の桁外れに豊かな世界の話は、景気がよくて読んでいて気持ちいい。あまりに景気がよすぎて、嫉妬する気も起きないほどだ。

アラビア半島にはサウジアラビアやカタル、アラブ首長国連邦などの王国が連なっている。各国とも石油と天然ガスの産出国であり、そのおかげで国民は税金を支払う必要がなく、皆が金持ちである。中でも王族や豪商の財産は桁外れで、彼らは尽きることのない財産を使って巨大事業や投資を続け、さらに豊かになっていく。

日本ではバブルは数年しかなかったが、アラビアの王国ではもう何十年もバブルが続いている。少なくとも石油の埋蔵量はあと約70年分あるから、それまでバブルが続く可能性が高い。ただ、栄枯盛衰という言葉もある。10月にアメリカの金融バブルがはじけて、はたして彼らはどれほど打撃を受けたのだろうか。

著者は今4つのウェブサイトを主宰または共同で運営している。今後の中東情勢に興味のある人は、一度覗いてみるのもいいだろう。ここでは1つだけ下にリンクを張っておく。

(11月10日読了)

アラビア半島定点観測


2008.11.08

梶原しげる著『すべらない敬語』(新潮新書)を読む

11月8日(土)

フリーの有名アナウンサーが、巷の様々な敬語の使われ方を分析し、概ね妥当な敬語の使い方について考察した本。国の出した画期的な「敬語の指針」の解説、日本語と英語と韓国語とでの敬語の使われ方のちがい、名人アナウンサー3人の敬語の使い方、マニュアル敬語の問題点、有名政治家たちの敬語の使い方、放送業界の敬語、「お疲れ様」と「ご苦労様」の問題など、気になる様々な敬語の使われ方を俎上にのせている。

知らなかったのは、今世紀に入って、国の文化審議会で「敬語の指針」が2度も出されていることである。最新の「敬語の指針」の詳細は文化庁のウェブサイトにも載っている。なんと敬語の分類の仕方が、尊敬語、謙譲語1、謙譲語2(丁重語)、丁寧語、美化語と変わっている。よけいなことをという気にもなるが、最近の「明日弟のところへ参る予定です」(謙譲語2)やお受験(美化語)などのように、これまでの分類では対応できない敬語表現に対応するものとして納得はできる。

敬語にはプラス面だけでなく、変に使うと人間関係を損なうこともある。いずれにしても敬語のプラス面とマイナス面をこういう本で学んだ上で、実際の人間関係の中で使っていきながら妥当な使い方を探っていくしかない。敬語の使い方は最終的には自己責任と国の指針でも述べられているところが印象に残った。

(11月6日読了)

敬語の指針(答申)pdf
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