村上春樹著『中国行きのスロウ・ボート』(中公文庫)を読む
10月30日(木)
村上春樹の初期短編集。1980年4月から82年12月までの7つの短編が収録されている。
この短編集を読むきっかけになったのは、NHK教育のラジオ英会話の7月の放送である。7月24日放送の今月の歌が「On a Slow Boat to China」でまさに「中国行きのスロウ・ボート」であった。そういうタイトルの本があったなとこの短編集を思い出し、いい機会だから読んでみようと思った次第である。後に自分の読書記録を調べたら、1986年1月28日に読み終えた記録があったが、読んだ記憶はまったく残っていない。
今回読んだところでは、これらの作品群から、後に展開される村上文学のさまざまな萌芽を感じられた。ある作品では自分の書く立場を、ある作品では自分の書く方法を、また他の作品では自分のライフスタイルを語っている。それでいて、それらは物語としても楽しめるものになっている。
村上春樹は現在ノーベル文学賞の有力候補と言われている。氏の文学的達成がどの程度のものなのかわたしには理解できないが、村上ワールドという「ゆっくり進む中国行きの船の上で」、もうしばらく氏との「ポーカー・ゲーム」を楽しめそうな気がしている。
(10月24日読了)
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