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2008.08.01

小泉義之著『病いの哲学』(ちくま新書)を読む

8月1日(金)

病いの哲学とは、不治の病の哲学のこと。不治の病にかかった人は、長らく、死へと傾斜する存在としてのみカテゴライズされてきた。また、移植手術の発達から、脳死状態の人は死んだと見なされ、生きたまま臓器を取り出されるようになった。不治の病や脳死移植について哲学すると、生と死の境界でのぎりぎりの思考が見えてくる。

著者は、ソクラテス、ハイデッガー、レヴィナスの哲学から、死の哲学、犠牲の哲学を抽出する。そしてそのような哲学を死に淫する哲学と評する。一方、死に淫する哲学に対抗する哲学として、プラトン、パスカル、デリダ、ジャン=リュック・ナンシー、フーコーの中から、病いの哲学、病の末期の哲学を抽出する。また、医療の社会学的な意義を考えるため、パーソンズに学ぶ。

この本から見えてくるのは、わたしたちの社会は、不治の病にかかることの価値を軽視してきたということ。もう少し、死に淫することなく、生そのものを見つめると、不治の病の人に固有の実情が価値あるものとして見えてくる。いくぶんは著者独特の煽りにだまされているような気もするが、たぶん、わたしたちの社会は根本から変わる必要がある。

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