畑正憲著『人という動物と分かりあう』(ソフトバンク新書)を読む
8月7日(木)
ムツゴロウさんこと畑正憲の科学エッセイ。長年の哺乳動物の飼育の経験から哺乳動物の発育に共通する法則を見出し、それを現在の脳科学の知見と結び付ける試みを主に記している。もちろん人間も動物の一種であり、現代の少年犯罪と脳の発達の条件との関連についても考察している。新しい学問として確立するかはともかく、非常に密度の濃い観察からしか得られない知見に満ちていておもしろかった。
ただ畑正憲はかつてローレンツの『攻撃』を思弁的と批判した。それと同じくらいこの本も思弁的であるのは確かだ。氏自身がテレビで「本で得た学問的知見を書くのを今まで封印していたがこの本で解禁した」と言っていたが、同時にそれは氏のかつて批判していた思弁的な文章を自身に解禁することでもあるはずである。
(2006年4月30日読了)
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