山本敏晴著『国際協力師になるために』(白水社)を読む
7月8日(火)
著者はNPO法人・宇宙船地球号の理事長兼事務局長で、写真家でありながら医師でもある。開発途上国を中心に70ヶ国に及ぶ国で撮影をし写真展を催したかと思うと、さまざまな国際協力団体に所属して医療援助活動に参加したりしている。
そんな著者の一番の関心は、この世界が持続可能な社会でありつづけることである。そのための方法の一つとして、国際協力の分野でプロとして活動できる人、つまり著者の言う国際協力師を一人でも増やそうとこの本を書いている。
初めは宇宙船地球号とか国際協力師とか何か胡散臭い感じがしたのだが、本の中味は意外と(失礼!)まともだった。この本では、国際協力の分野で共通する方法論についての説明があり、さらに貧困を減らす仕事、健康を守る仕事、HIV・エイズ対策、環境問題などの具体論に即して、現状の問題点とこれからの展望が述べられている。その合間には国際協力とはまったく関係ない話が閑話として挟まれており、そこから著者の明るい人柄が伝わってきて、いい息抜きになっている。
著者の書き方はやさし過ぎることなくかつ難しくなく、国際協力師の仕事の魅力と困難さを伝えているが、この本はもちろん入り口にすぎない。国際協力師になるためには、最低でも開発に関する大学院の修士号、英語ではTOEFL600点以上の実力、海外での勤務経験2年以上などが必要で、実はかなりハードルが高い。
でも、この本を読んで、やる気になりさえすれば、かなりの人が国際協力師になれるはずである。わたしは今46歳の中年だけど、それでも少し気持ちが動かされた。世界は問題に満ちており、解決されることを待っている。そのためには多くの人の力が必要である。一市民として自分にできることをやるのもいいけれど、国際協力師として生きるのもいいのではないか。
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