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2008.07.15

堤未果著『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)を読む

7月15日(火)

2001年9月11日にアメリカで起こった同時多発テロ。それからアフガニスタン侵攻、2002年にはイラク戦争が起こった。このルポは、911を契機にアメリカで富裕層と貧困層の格差の拡大が顕著になり、そのことによって、今アメリカ社会に何が起こっているかをルポしたものである。新書でルポということで初めからページ数に制限があるが、そのことで典型的な人への取材に限定されることになり、かえってアメリカ型の貧困がはっきりと浮かび上がる効果が出ている。

ここまでアメリカの暗部を描いたルポというと本多勝一の『アメリカ合州国』を思い出す。あの作品がベトナム戦争の最中だったからもう40年になる。その割には、読んだ印象はあまり変わらない。アメリカが泥沼の戦争を起こすと自国民の貧困層が被害を受けるという構造はあいかわらずだからだ。

ただ、今回は新保守主義という政治思想が政府の中枢を支配し、市場原理第一の政策を選択して、あらゆる社会保障分野の民営化を進めてしまったため、かつて存在した中流層までが貧困層へと転落するという、より悪い事態が起こっている。貧困層に転落した人たちの多くは、起死回生の手段としてイラク戦争に参加する。その参加を促すのも民間の派遣会社という徹底ぶりだ。また、そうした事態に声を上げるべきマスコミも、新保守主義層に経営を支配されて、ジャーナリズム精神を失っている。

この本ではこうした事態と戦うNPOなどの活動も紹介している。経済的自由と社会的平等はそのままでは両立しないことは、フランス革命の時代から明らかになっている。民主主義は常に市場原理と戦わなければならない。でも平等が行き過ぎると社会主義国のように、生産性のひどく劣った社会になってしまう。ただ、今のアメリカが行き過ぎた経済的自由に傾いているのならば、それを正せるのは国民しかいない。著者は世界市民と言いたいのかもしれないが。

日本でも同じ事態は進行している。兄ちゃん、自衛隊はいらへんかのおじさんは最近見かけないから、アメリカのように戦争とは直結していないけれど、格差の広がる社会をそのままにしておけないと言う点では、日本の国民も声を上げる時に来ている。誰にでもできる方法は、次の選挙の際に志を持つ者に投票することである。

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