中島義道著『「人間嫌い」のルール』(PHP新書)を読む
5月9日(金)
人間嫌いを自他共に認める著者が、自分のように人間嫌いな人がどうすればもっと楽に暮せるようになるかを語ったもの。これほど自分語りをする人が人間嫌いというのもおかしな話で、自分大好き人間としか見えない。それとも著者の定義ではそれも人間嫌いなのだろうか。
著者は人間嫌いを治すことはできないから、人間嫌いのままで今よりも生きやすい方法を選ぶよう勧めている。共感ゲームから降りる、一人でできる仕事を見つける、他人に何も期待しない、家族を遠ざける、という各項目を論じた後で、人間嫌いのルールを10にまとめる。これを読む限りは、わたしも似たような生活を送っていて、一人が好きなタイプは自然にこのような生き方を選択しているように思う。でも、人恋しいタイプの人には厳しい生活なのかもしれない。
著者の言うように、今の日本社会は個人に過剰な要求をしているような気もする。だから著者のような人間嫌いでも楽に生きていける社会とは、実は大多数の人にとっても楽な社会なのではないか。でも都市に限れば、他人に干渉しないで、犯罪や事故や災害で人が亡くなっても誰も大して関心を持たない社会にはすでになっている。あとはそれを嘆いてみせるマスコミや良識ある「善人」たちがいなくなれば、著者好みの社会になるのだろうか。でも道で人が倒れていても見て見ぬふりをするような社会は著者の好みではないらしいから、この辺りのさじ加減は難しいところである。
読後感は悪く、正直言って、わたしはこの著者が嫌いになった。その理由を言うのはまだ難しい。今後自分の中で徐々に言葉になっていくような気がする。
(5月7日読了)
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