柄谷行人著『世界共和国へ 資本=ネーション=国家を超えて』(岩波新書)を読む
4月9日(水)
現代世界のシステムを資本=ネーション=国家ととらえ、それがいかにして誕生し、現在いかに存在するのか、それを超えるためにどのような試みがなされたのか、その試みに足りなかったものは何かが記される。そして現在のシステムを超えるものとしての世界共和国への道筋が示される。
世界のあり方は交換様式の違いとして示される。互酬、再分配、商品交換であり、そして未だ実在しないXである。交換様式の違いは現在の資本制社会の内部の違いでもあり、政治思想の違いでもあり、歴史上の社会のあり方の違いでもある。社会主義は生産様式の違いで社会を説明したがまちがいだった。交換様式の違いこそが社会の違いの本質なのだ。そして交換Xで示されるのがアソシエーションという社会のあり方である。
非常に骨太の論である。これまで知識としては知っていたことが大きな枠組みの中でスッキリと示される。そのためにこれまでの社会理論や哲学への思い切った断定がなされる。それが心地よい。
それにしても国家とはこんなにやっかいなものなのか。それがネーションステート(国民国家)(ネーション=国家)として資本と分かちがたくツタが絡まるように結びついている。これを解きほぐすのは容易ではない。ただ道筋は示されている。希望はある。
(2006年8月14日読了)
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