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2008.04.29

金城一紀著『GO』(講談社)を読む

4月29日(火)

日本で生まれ育った韓国籍の高校3年生の男のラブストーリー。在日朝鮮人・韓国人というカテゴリーに押し込められ差別を受けながらも、父親から教わったボクシングと知性によって力強く差別を乗り越えてゆく。日本人の信じられないくらいかわいい女の子とも付き合うようになる。

暴力の描写にはちょっと引く。感覚的には痛快なのだが、暴力が全面的に肯定されているところに抵抗がある。それでいて主人公は自分を僕と言う。おそらく彼の知性がそう言わせている。しかし彼の知性は暴力と結びついている。そして女神を崇めるような、好きな女に対する描写。これは南米の貧民層のマチョイズムと同型ではないのか。

主人公は民族や伝統を越境する普遍性を求めている。多くの本を読み、音楽を聴き、映画を見る。しかしその知性の型はマチョイズムに類型される。そこにこの主人公の限界を感じる。

もちろん、彼らを在日だのチョンだのと呼び、チョンは祖国へ帰れ、それが嫌なら帰化しろと平気で掲示板に書くような連中の知性を軽々と飛び越えていることは確かである。

(2006年7月9日読了)


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