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2008.04.29

金城一紀著『GO』(講談社)を読む

4月29日(火)

日本で生まれ育った韓国籍の高校3年生の男のラブストーリー。在日朝鮮人・韓国人というカテゴリーに押し込められ差別を受けながらも、父親から教わったボクシングと知性によって力強く差別を乗り越えてゆく。日本人の信じられないくらいかわいい女の子とも付き合うようになる。

暴力の描写にはちょっと引く。感覚的には痛快なのだが、暴力が全面的に肯定されているところに抵抗がある。それでいて主人公は自分を僕と言う。おそらく彼の知性がそう言わせている。しかし彼の知性は暴力と結びついている。そして女神を崇めるような、好きな女に対する描写。これは南米の貧民層のマチョイズムと同型ではないのか。

主人公は民族や伝統を越境する普遍性を求めている。多くの本を読み、音楽を聴き、映画を見る。しかしその知性の型はマチョイズムに類型される。そこにこの主人公の限界を感じる。

もちろん、彼らを在日だのチョンだのと呼び、チョンは祖国へ帰れ、それが嫌なら帰化しろと平気で掲示板に書くような連中の知性を軽々と飛び越えていることは確かである。

(2006年7月9日読了)


2008.04.27

A.A.Milne著『Winnie-the-Pooh』(A PUFFIN BOOK)を読む

4月27日(日)

「くまのプーさん」としてディズニーアニメとしても知られる児童文学の古典。1926年作だから昭和2年の作品である。わたしも幼稚園児の頃に絵本を読んだことはあるが、原作を読んだのは日本語訳も含めて今回が初めてである。

子供向けの本だけど、読んでみると意外と読みづらい。詩的言語と言うのか、一つの言葉に込められた意味の濃度が高くて、スラスラ読み進められない感じがした。でも少しずつ読み進むうちに、この果てしなくのんびりとして、誰もがその個性のままに生きられる世界に引き込まれていった。さすがに古典として残っている作品である。

作者のミルンが息子のために息子の持っている熊のぬいぐるみについての物語を作ったのがこの物語である。作品の中でもミルンが息子に話を聞かせる形で物語が進んでゆく。父親としてミルンは特に教訓を残そうとしているようには見えない。でも、世の中のしがらみの中で生きて疲れた時に、いつでもそこに戻ってたっぷり休息できるような、そんな世界を提供してくれているように思う。

そういう意味ではこれは大人のための本でもある。

(4月24日読了)

2008.04.24

TVで気になった2人の老人

4月24日(木)

最近TVを見ていたら、気になる老人が2人出ていた。

1人目はプロゴルファー・杉原輝夫である。今71歳でプロ歴51年の大ベテランが、ゴルフ場でのインタビューでガンの転移を告白していた。10年前のガンが転移したらしく、手術しないと決めたのは自分だから、しょうがない、あとはできる限りプレーを続けていきたいと言っていた。療養に専念した方がいいとは思うが、本人が自分の欲というか執着があって、ゴルフをやめる訳にはいかないとのことだった。欲や執着という言葉がいやらしく聞こえなかったことがふと印象に残った。

2人目は哲学者・木田元である。今79歳でNHKの『爆笑問題のニッポンの教養』という番組に出ていた。ハイデッガー研究の先駆者で、『存在と時間』の続きを自力で構築したほどの哲学者が、自分の子供くらいの歳の太田や田中に真摯に向き合っていた。哲学の素養のない人間を相手にする時ほど哲学者が無力になる時はないものだが、木田さんはよく健闘したと思う。木田さんも数年前にガンを患いあと4、5年の命だろうと自分で言っていた。

いくら歳を取っても真剣に自分の人生を生きることを忘れていない人を見るのは、ただそれだけで励みになる。

2008.04.18

劇団ひとり著『陰日向に咲く』(幻冬舎)を読む

4月18日(金)

5つの短編からなる作品集。各々ホームレス、アイドルオタク、させ子、多重債務者、売れない芸人を主人公とし、すべての作品に各々の主人公たちが何らかの形で関わっている。つまりこの本は、短編集でありながら一つの統一された小説の世界を描いている。

読後感は、劇団ひとりの一連のコントを見終わった感じと言おうか(見たことはないけど)。とにかく笑える。旅行中の電車と飛行機の中で読んでいて、笑いをこらえるのが大変だった。社会から逸脱した人間たちの真面目でありながらどこかおかしい言動に笑えるのだ。下手をすれば日本映画にありがちなただ暗い話になりがちなところをうまく笑いに変えている。秀作だと思う。

(2006年8月4日読了)

2008.04.15

宝彩有菜著『気楽なさとり方』(日本教文社)を読む

4月15日(火)

著者の「気楽なさとり方」はシリーズになっていて、これがその最初の著作である。禅宗では十牛図なる悟りの段階を示した図が伝えられているらしいが、それをギャグ漫画家の谷岡ヤスジの画で再現した。欲望を牛に喩えて、牛を見つけて、走り回る牛を捕まえて自在に乗り回し、やがては牛を再び放つまでの過程が描かれる。

喩えは異なるが、さとりの段階や方法については前に読んだ「心がどんどん晴れる」とほぼ同じことが書いてある。わたしには前の本の方がしっくりいった。人によって合う本がちがうと思うので、シリーズが図書館や本屋に揃っているなら、パラパラと読み比べて自分に合いそうな一冊を選べばそれで十分と思う。理屈や方法がわかれば、あとは実践あるのみということだ。

(4月15日読了)

2008.04.13

小泉義之著『生殖の哲学 シリーズ・道徳の系譜』(河出書房新社)を読む

4月13日(日)

わたしたちは、生-権力に支配された世界に生きている。生-権力とは人間の生のあらゆる局面を支配しようとする力であり、性や生殖や養育におけるわたしたちの選択も支配する力を持つ。それは人間が社会を作って生きている以上必ず生じる力であって、それを排除する手段は現実にはない。

しかし著者はそれをSF的な想像力によって排除してみせる。そして生-権力に支配されない未来像を描いていく。そこでは、今話題のクローン技術も万能細胞の技術も万人に解放されている。人は動物と結びついて改造人間にもなるし、女は男を介さないで単為生殖で自分のクローンを生み出す。そういう技術では必ず障害者が生まれる。だから著者は障害者の誕生を徹底的に肯定する。路上を障害者が歩き回る社会を豊かな社会と価値付ける。

とんでもないことを想像する人だと、わたしは恐怖感さえ覚える。だが、こういう社会もあっていいのかなともどこかで思う。20世紀後半の発生生物学の発展が新しい生物を作り出す段階に来ており、それがかつてないほどの革命の可能性を秘めていることは理解できる。

現実には生-権力の働きによってそうした技術は強く制御されていくだろうから、このような未来は考えにくいけど、今までは考えも及ばなかった可能性が開かれたことは確かだろう。もうポスト・モダンどころではない。

(4月13日読了)

2008.04.11

ダイエットを始めてみた

4月11日(金)

最近体重が70kgを超えてきて普通に暮しているとどんどん増えそうな予感がして、ついに意識的にダイエットをすることにした。以前は78kgくらいあったこともあって、その時も1000円ダイエットと称して食費を抑えるダイエットをして成功して68kgまで減らし、それが効かなくなると果物ダイエットを本で見つけてきて実行したりしてきた。

今回はレコーディングダイエットなるものを始めた。これは評論家の岡田斗司夫氏が提唱しているもので、氏自身も110kg以上あった体重を70kg以下に減らした。やり方は、一日の食事カロリーを記録して、そのカロリーをできるだけ1500kcalに抑えるというものらしい。らしいというのは正確な方法を知らないからだが、まあそんなにまちがってもいないだろう。最近はコンビニの食品にはカロリー表示があるし、カロリーの目安をまとめたサイトもあるからそれほど難しい方法ではない。

ただ、やってみると自分では抑えているつもりでも意外とカロリーを取っている。今週の月曜日から始めたのだけど、初日から1713kcal、2260kcal 、1970kcal、1578kcalと続き、今日もすでに1700kcalを超えている。一日1500kcalといったら一食500kcalで、これではご飯一杯におかず1品か2品の量である。だから一日に一食だけでも低カロリーの食事にしないと中々このダイエットは成功しない。

以前やった果物ダイエットが一日のうち一食だけを果物だけにするものだった。これだと食べてもせいぜい一食200kcalですむ。もう一度果物ダイエットを取り入れるのもいいのかもしれない。待てよ。だったらカロリーを記録する必要はないのかな。

2008.04.09

柄谷行人著『世界共和国へ 資本=ネーション=国家を超えて』(岩波新書)を読む

4月9日(水)

現代世界のシステムを資本=ネーション=国家ととらえ、それがいかにして誕生し、現在いかに存在するのか、それを超えるためにどのような試みがなされたのか、その試みに足りなかったものは何かが記される。そして現在のシステムを超えるものとしての世界共和国への道筋が示される。

世界のあり方は交換様式の違いとして示される。互酬、再分配、商品交換であり、そして未だ実在しないXである。交換様式の違いは現在の資本制社会の内部の違いでもあり、政治思想の違いでもあり、歴史上の社会のあり方の違いでもある。社会主義は生産様式の違いで社会を説明したがまちがいだった。交換様式の違いこそが社会の違いの本質なのだ。そして交換Xで示されるのがアソシエーションという社会のあり方である。

非常に骨太の論である。これまで知識としては知っていたことが大きな枠組みの中でスッキリと示される。そのためにこれまでの社会理論や哲学への思い切った断定がなされる。それが心地よい。

それにしても国家とはこんなにやっかいなものなのか。それがネーションステート(国民国家)(ネーション=国家)として資本と分かちがたくツタが絡まるように結びついている。これを解きほぐすのは容易ではない。ただ道筋は示されている。希望はある。

(2006年8月14日読了)

2008.04.06

中島義道著『哲学の教科書』(講談社学術文庫)を読む

4月6日(日)

哲学の教科書というと高校の倫社の教科書のような哲学史っぽいものを連想するけど、この本はそうではなく、哲学で問題にしていること/していないことを直接取り上げることで、哲学とはどんな学問かが読者に感覚的にわかるようになることをめざしている。確かに、哲学の問いは本来普遍的なもののはずだから、古代ギリシアの誰々とか17世紀フランスや18世紀ドイツの何某だとか時代や国、人とは関係のないはずのものだ。

おもしろいのは、最初に死の哲学的な問題が論じられた後に、哲学とは何でないかに1章が当てられていることである。哲学の本なのにそこでは文学、芸術、人生論、宗教、科学の名文が引用され、すばらしいのだけれど哲学ではないと断じられる。哲学とは深みのあるものではなく、子供が日常で不思議に思っていることの中に含まれており、それを精緻な言葉で論じたのが哲学であるというのが著者の考えらしい。

なぜ未来がいつのまにか今になり過去になるのか。私が生まれる前も死んだ後も時間や空間は無限にあるものなのか。空間物質転送装置ができたとして、この私の心まで同じように転送できるのか。物語の主人公と実在する人とを区別するものは何か。そもそも何かがあるとはどういうことか。個人的にはきのう嫌なことがあったせいか、わたしを侮辱する者たちを殺すことは善か悪かという問いを立てたいところだ。

哲学的な問題には答えようのない問題が多い。それに何とか説明をつけてみること、もしくはどこまでが意味のある問題で、どこを越えると無意味な問題になるのかを区別してみることが哲学者の役割である。あまり人の役には立ちそうにないけど、哲学は哲学として存在することに意義があるというのが著者の考えのようである。

単行本は著者が売れっ子になる前の1995年に刊行されている。そのためか文章が初々しくて謙虚である。その分、いわゆる中島節を期待している読者にはやや期待はずれかもしれない。

(4月6日読了)


2008.04.04

村上春樹・柴田元幸著『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』(文春文庫)を読む

4月4日(金)

2003年にサリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を村上春樹が訳した。ここにはその翻訳をめぐる事情と作品論をかねた2つの対話に、村上による作品の解説、柴田による作品のアメリカ文学における位置づけが載っている。

社会に反抗する青年像から自己のあり方を模索してさ迷い続ける永遠の少年像へと変換して日本の読者に提示することが、今回の翻訳の主な目的だったらしい。わたしは村上訳を読んでいないので何とも言えないけど、対話は刺激に満ちたものだった。

(2006年8月19日読了)

2008.04.02

Louis Sachar著『HOLES』(A Yearling Book)を読む

4月2日(水)

Stanley少年は、先祖が魔法使いとの約束を破ったために呪いがかけられた家系の末裔である。そのせいか父の仕事はうまくいかず学校ではいじめられる毎日だった。その上、ある日、無実の罪で少年向けの更正施設へと送られてしまう。そこは干上がった湖のある、雨がまったく降らない酷暑の場所で、その条件によって外部から完全に隔離されていた。そこでStanley少年は他の少年たちとともに毎日穴を掘らされることになる。

少年の先祖の話、湖で過去に起こったこと、過酷な穴掘りの毎日が平行に語られる。それらは初め互いに無関係のことのようである。ところが後半になって次第に各々の話がつながり始め、なぜ穴は掘られるのかという謎の中心に向かって収斂していく。そして最後に爽快に謎が解かれる。

さりげない伏線が最後になって意外な効果を見せるなど、かなり楽しめる作品である。翻訳もあるようなので、日本の子供たちにもぜひ読んでもらいたい。

(2006年9月9日読了)

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