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2008.02.22

小熊英二著『日本という国』(理論社)を読む

2月22日(金)

理論社では、14歳くらいの子供を対象に「よりみちパン!セ」というシリーズを出している。この年代の子たちに生きる指針を示すことを目的としたシリーズである。この本はその中の一冊で、明治からの日本の近代史を大まかな見取り図を描くように説明したものである。

日本は明治以来、大日本帝国としての道を歩んだ。その歩みは福澤諭吉の思想によって説明されている。欧米の帝国主義と戦うため、大日本帝国はそれまでの身分制を廃し、学歴によって優秀な人材を登用し、強い国家を作る道を選ぶ。そして日清戦争、日露戦争と連勝してその願いは達成される。その時点では大日本帝国はアジアの期待の星で、アジア各地の独立運動の模範であった。しかし大日本帝国はさらに欧米と同じように、アジア地域を植民地として支配するようになり、独立運動も弾圧する。結果として、日本はアジア地域に甚大な被害を及ぼしてしまう。

第二次大戦が敗戦で終わり日本は日本国として再出発する。日本は戦争に負けたことでアメリカに占領された状態から出発する。アメリカの主導で新しい憲法が作られ、民主的で軍隊を置かない国として出発するが、冷戦の中でそのアメリカから再軍備を要求され自衛隊ができる。やがて当時の西側諸国と講和条約を結んで独立するがそれもアメリカの主導で行われ、アメリカの言いなりの国家として戦後を歩むことになる。

敗戦国としての賠償は、アメリカのおかげで最小限の賠償金ですみ、あとは経済援助という形を取ることになる。当時のアジア諸国が独裁国家だったこともあって、実際に被害を受けた人に直接賠償金が渡ることはほとんどなかった。80年代後半からのアジア各地からの個人的な賠償請求は、冷戦が終結してアジア各国で民主化が起こったために、それまで抑圧されていた民衆の要求が表面化したものと言える。

日本はアメリカの子分として戦後を過ごしてきたが、それでも憲法9条のおかげでアメリカの圧力にも関わらず、朝鮮戦争やベトナム戦争などで自衛隊の海外派兵は行わないでいられた。アメリカの作った9条がアメリカから日本を守った面がある。しかし冷戦の終結後、日米のガイドラインが作られ、湾岸戦争、イラク戦争などで特別措置法が作られ、自衛隊の海外派兵が後方支援の形であれ行われるようになった。

今後アメリカは憲法改正の圧力を強めるだろう。日本ではその圧力を背景に安倍首相が憲法改正の準備を進めている。それは9条の改正が焦点になるだろう。さて、君たちはどうする。
そう著者は問いかけている。

著者の思い入れの込められた良書だと思う。でも著者の思想が強く出すぎている本とも言える。つまりはツッコミどころがけっこうあるということだ。ただ、日本は戦前も戦後も道をまちがえているかもという気はする。なぜ日本は脱亜入欧の道を選んだのだろう。なぜ戦後もアメリカ一辺倒でアジアを軽視してきたのだろう。アジアへの軽視をやめて、中国人や朝鮮人と絆を結ぶ道を個人としても考えたくなるような本であった。

(2007年3月24日読了)

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