重松清著『くちぶえ番長』(新潮文庫)を読む
12月30日(日)
作家の僕が小4の時の忘れられない思い出を語るという形式で物語が始まる。マコトという男の子のような名前の女の子が、新学期に転校してきて3学期にまた転校するまでの1年間の話である。
マコトは、転校してきた日に番長になると宣言する。最初は女子のいじめにあいながらも、弱い子をかばい、いじわるな上級生と戦うマコトの姿に、次第にクラスの皆はマコトを認めてゆく。実は、マコトの父親と僕ツヨシの父親は小学校のときの親友で、でもマコトの父親はすでに亡くなっている。そんなこともあって僕とマコトはより深くわかり合うようになる。なぜ「くちぶえ番長」なのか。それは「泣きたいときには口笛を吹けば涙が止まる」という父親の教えを守って、マコトがよくくちぶえを吹くからなのだ。
小4の僕がマコトとの関わりを通して、自分の生き方をちょっぴり力強いものに変えてゆく。おそらく小4のどんな子供でも多少は経験するようなことを僕は経験し成長してゆく。そこにこの物語の普遍性がある。重松清の名前は今まで聞いたことがあったけど、小説を読んだのは初めてだ。大人が読んでもおもしろいけど、これは今小4の子にぜひ読んでもらいたい。妹夫婦の娘が今小3なのだが、小4になったら読んでもらいたいと思えるくらいいい本だった。(12月29日読了)
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