キャサリン・サンソム著『東京に暮す 1928-1936』(岩波文庫)を読む
12月23日(日)
イギリスの外交官ジョージ・サンソム卿の夫人であるキャサリン・サンソムが東京に滞在した間の日本および日本人の印象を記した本。昭和3年から11年の8年にかけての滞在で、実に細やかに様々なことを観察している。外交官夫人で貴族階級の立場での上から目線が最初鼻につくが、その観察の細やかさと人の長所を見ようとする柔らかい視線の魅力が次第に勝ってくる。また翻訳の日本語も自然で、何の抵抗感もなく読み進むことができた。
この本を読むと、戦前と戦後を断絶したものと捉える見方が偏見であることがわかる。日本も日本人も戦前とほとんど変わっていない。そのゆるやかな連続の上に今の私たちはある。そう考えると、安倍前首相の美しい日本論も、戦前からの連続性を再評価しようという主張で、むしろ断絶性を強調するより自然な物言いであるのかもしれない。(10月20日読了)
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